マルクス・エンゲルスについてもっと詳しく知りたい人のために  

『資本論』を中心とするマルクス・エンゲルスの著作の抜粋(その10)

J、検討すべき課題ほか

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J、検討すべき課題ほか

 

このページの紹介

このページは、マルクス・エンゲルスについてより詳しく知っていただくために、マルクス・エンゲルスの著作の重要な部分を抜粋して「Aマルクス・エンゲルスと資本論」から「J、検討すべき課題ほか」までの10ページに分類した中の「J、検討すべき課題ほか」のページで、下記の27-32のテーマが扱われています。著作の紹介の仕方は、短いフレーズのものは直接紹介し、若干の長さのあるものはPDFファイルに落とし込み、みなさんの利便性を考慮いたしました。

 

このページのテーマ

27、市場と貨幣と商品の価値のとらえ方について

28、そのほかの事項についての青山の考え

29、その他のマルクス・エンゲルスの小さなミス等

30、ことば

31、豆知識

32、人名

 各テーマは、『資本論』と久留間鮫造氏編『マルクス経済学レキシコン』を中心に抜粋したものです。出典が「○-[ ]」と表示されているものは、『レキシコン』の「○」号の文書番号「[ ]」に載っていることを示しています。『レキシコン』に載っているテーマについては、何かの機会に全文をデーター化したものを除き、一部をデーター化したり、要旨を述べるにとどめています。お手数ですが、直接『レキシコン』を参照して下さい。ひととおり完成したら、全ての文章のデーター化にチャレンジしたいとおもいます。

 

〈J、検討すべき課題ほか〉を掲載するに当たって

 意見の一致を見ない、検討すべき課題については、さまざまな見解があるだろう。たとえば、「25、社会主義・共産主義」で抜粋した「25-10未来の教育の萌芽」なども、異論があろう。毛沢東の「文化大革命」を連想する人もいるかもしれないし、ノーベル賞の益川先生や発明王の島精機の社長を思い浮かべる人もいるかもしれない。しかしここでは、問題を経済に絞って提起することとする。

 

27、市場と貨幣と商品の価値のとらえ方について

27-1 資本主義的生産関係のもとでの貨幣制度
  資本主義的生産関係のもとでは、「交換価値が資本に発展しないように、とか、あるいは、交換価値を生産する労働は賃労働に発展しないように、とかいうのは、かなわぬ願いであるばかりか、ばかげた願いでもある。」⑤-[70]P167下線部 (マルクス『経済学批判要綱』ⅡP169)
【青山の考え】
 社会主義社会においては、貨幣は単なる交換の仲立ちに変わる。社会主義下の商品の原価は、その生産のために直接投下された労働量に、その商品の消費に よって加わる社会的負荷を解消するために必要な労働量を加えた額と設備の維持管理費を足したものになるが、再生産のための原資は社会が必要とする財・サー ビスの量に応じて分配され余すところなく活用され、労働者の「財・サービスの請求権」(「賃金」)は労働に応じて支払われる。労働者の搾取も私的利益を拡 大するための「投資」も存立の基盤を失う。


27-2 商品だから商品資本なのではない
「貨幣を貨幣として特徴づけ商品を商品として特徴づける独自な諸属性や諸機能を貨幣や商品の資本性格から導き出そうとするのは、まちがいなのであり、また逆に生産資本の諸属性を生産手段としてのその存在様式から引き出すのも、やはりまちがいなのである。」

( 大月版『資本論』③P99B3-101F1)
【青山の考え】
 だから、社会主義社会で商品の廃止を前提とすることは正しくないし、資本主義的生産様式のもとで否定的な機能をもつものの存在を全否定するのは誤りである。

27-3 共産主義の社会では貨幣資本はなくなる
「資本主義のではなく共産主義の社会を考えてみれば、まず第一に貨幣資本は全然なくなり、したがって貨幣資本によってはいってくる取引の仮装もなくなる。」(大月版『資本論』③P385B11-10) *この場合の「共産主義の社会」とはいわゆる「社会主義社会」のこと(青山)

【青山の考え】実需に基づかない取引は存在余地がない。

27-4 社会的生産では貨幣資本はなくなる
「社会的生産では貨幣資本はなくなる。社会は労働力や生産手段をいろいろな事業部門に分配する。生産者たちは、たとえば指図証を受け取って、それと引き換えに、社会の消費用在庫のなかから自分たちの労働時間に相当する量を引き出すことになるかもしれない。この指図証は貨幣ではない。それは流通しないのである。」(大月版『資本論』ⅡP437-8)
【青山の考え】
 前項(27-3)やこれらの文章が、「社会主義国」での市場の廃止の根拠になったと思われる。レーニンも革命直後市場の廃止の方向をめざしたが、その誤りをいち早く気づき〝新しい経済政策〟を実施した。
 貨幣の形態をとった搾取の手段としての資本であるところの貨幣資本はなくなるが、価値尺度、交換手段としての貨幣は社会主義の低い段階では存在する。社会主義の比較的早期に日用品の多くは貨幣との交換なしで取得できるようになるかもしれないが。

27-5 価値は商品生産とともに消滅する      「15-13」と同一文です。
②-[77](カウツキーあてのエンゲルスの手紙 1884.9.20)
【青山の考え】
 商品(購入する財)は社会主義社会でも残る、その意味で、市場は残る。合理的な生産のためには生産のために投入された労働量を測る必要も残る。ただし、商品の価格は社会的に統制されて設定される。
※「25-8 資本主義的生産様式の解消後の価値規定の重要性」も参照して下さい。

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15-13 価値は商品生産とともに消滅する.pdf
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27-6 商品の価値は過去の労働時間と生きてる労働の時間との総労働時間によって規定されている   

    社会主義経済で合理的な経済運営を行う上で重要!!
「商品の価値は、その商品にはいって行く過去の労働時間も生きてる労働の時間も含めての総労働時間によって規定されている。」以下、P327F2までは、私の考えと一致している。( 大月版『資本論』④ P326B8-329F2 )
【青山の考え】
 こ こでの例では、「過去の労働時間と生きてる労働の時間」との合計は、「新しい生産方法」を導入する前と後とで同じになるので、労働需給等を考慮しないとす れば、社会主義経済の下でも導入のメリットがあるとは言えない。資本家は利潤率が向上するのであれば、無条件で、「新しい生産方法」を選択する。利潤率が 向上しなくても、「新しい生産方法」を導入することによって、将来の労働需給が資本の有利にはたらくならば、新しい生産方法を導入する。だから、ここでの 例の場合、資本は「新しい生産方法」を導入すると思われる。

 

28、そのほかの事項についての青山の考え

28-1 資本について
「資本家は自分が前貸しする資本のどの部分についても等しい利益を期待する。」(マルサス『経済学原理』)「このような、前貸し総資本の所産と観念されたものとして、 剰余価値は、利潤という転化形態を受け取る。」(大月版『資本論』④ P44B5-1)
【青山の考え】
☆総資本が価値を生みだすという考えは認められる。
☆なぜなら、不変資本も労働により生みだされたものだからである。
☆不変資本は労働を加えなければ価値を生みださないが、資本主義社会は、資本の増殖、資本家の利益追求のための社会システムであり、労働者の創りだした富を横取りするためのシステムなので、過去の労働の産物が価値を生みだすように偽装することによって成り立つっている。
☆私たちは資本(蓄積された富)を社会発展のために活用しなければならない。

28-2 商業と競争について
 資本主義的生産様式は、「その生産物を商業をつうじて分配する方法や競争というやり方のおかげで、物質的手段を非常にむだ使いしていながら一方で個々の資本家にもうけさせるものを他方で社会の損失にする」(大月版『資本論』④P109B8-6)
【青山の考え】
☆貨幣を使って自由に、好みに合う「モノ」を買うことは社会主義社会になってもなくならない。商業全体を社会がコントロールするので、個々の資本家の売り買いのミスマッチによるロスを軽減でき、消費を過度に煽るためのムダもなくせる。
☆競争は必要である。競争の結果、敗者をただちに活用できる体制が社会主義経済に組み込まれていなければならないし、社会主義は組み込むことができる。

28-3 不変資本充用上の節約については
(大月版『資本論』④P110F6-11)
【青山の注解】総資本の量は同じで、不変資本の充用量の拡大によって充用労働量は相対的に減少したが、生産性の向上により1.5倍の商品が生産されたとすれば、利潤率は高くなり、一時的に特別利潤を得ることになる。

28-4 株式会社の歴史的意味に関して
「労働者たち自身の協同組合工場は、古い形態のなかでではあるが、古い形態の最初の突破である。……資本主義的株式企業も、協同組合工場と同じに、資本主 義的生産様式から結合生産様式への過渡形態とみなしてよいのであって、ただ、一方では対立が消極的に、他方では積極的に廃止されているだけである。」( 大月版『資本論』④ P561B8-562F5 )
【青山の考え】
 最後の訳の部分の表現は適切ではないのではないと思う。「資本主義的株式企業」は「対立が消極的に」も、「廃止され」てはいない。

28-5 資本主義社会における信用制度の役割および社会主義社会と信用・銀行制度
資本主義社会における信用制度の役割(大月版『資本論』Ⅲ P562-3)
社会主義社会と信用・銀行制度(大月版『資本論』⑤ P783B6-784F5)
PDFファイルあり。

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28-5 資本主義社会における信用制度の役割および社会主義社会と.pdf
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28-6マルクス・エンゲルスのスミスにたいする誤解(?)等について
  〈『資本論』第2巻〉  PDFファイルあり。

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28-6 マルクス・エンゲルスのスミスにたいする誤解(?)等につ.pdf
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29、その他のマルクス・エンゲルスの小さなミス等

29-1 〈『資本論』第3巻 第1分冊 大月版『資本論』④ P64〉の数式
29-2 〈『資本論』第3巻 第1分冊 大月版『資本論』④ P67〉の数式
29-3 〈『資本論』第3巻 第1分冊 大月版『資本論』④ P276-277〉
         「搾取度が同じならば」という前提で書かれている。
29-4 〈『資本論』第3巻 第1分冊 大月版『資本論』④ P304-305〉のメモ参照

29-5 マルクス・エンゲルスの勘違いか?

「第四一章 差額地代Ⅱ──第一の場合 生産価格が不変の場合」に、「100ポンドの不変資本からは、それが固定資本として投下されるかぎり、ただ消耗分が商品の価値にはいるだけであるが、労賃のための100ポンドのほうは商品の価値のなかに全部再生産されていなければならないという相違である。」(『資本論』大月版⑤P889)という文章があるが、この場合の「不変資本」は「100ポンド」ではなく「消耗分の価値」だけである。「100ポンドの不変資本」という場合、「消耗分の価値」が100ポンドでなければならない。のでは?

 

30、ことば

以下にタイトルだけを掲げます。詳しくは下記のPDFファイルをご覧下さい。

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30-1 科学上の真理は、つねに逆説なのである。
30-2 なにごとも初めが困難だということは、…
30-3 経済学の取り扱う素材の独自の性質は、…
30-4 科学的批判によるいっさいの判断を私は歓迎する。
30-5 学問に平坦な大道はありません。
30-6 一つの科学の新しい見解は、…
30-7 人間は、宗教では自分の頭の作り物に支配されるが…
30-8 あらゆる種類の魅力ある泡沫企業への無謀な投機…
30-9 この世のなかで腐敗したものは、すべて、それだけの理由があって腐敗したのである
30-10 われ亡きあとに洪水はきたれ!
30-11 ジャガノート (「資本のジャガノート車の下敷き」)
30-12 「無知は十分な根拠になる」
30-13 どろぼうが二人で喧嘩すれば必ず良いことが起きる
30-14 社会的理性が事後になってからはじめて発現するのを常とする資本主義社会
30-15 同じ貨幣が売り手の手の中では買い手の手の中にあるときとは違った用途に役だつということは、どの商品売買にもつきものの現象である。
30-16 現実にあるものは、いつでもただ近似だけである。
30-17 大盗は小盗を絞(くび)る
30-18 偶然的であり純粋に経験的なものについて──ただ衒学または妄想だけがこの偶然性を必然的なものとして説明しようとすることができるのである。
30-19 内的な関連から疎外された、それだけとして見ればばかげたものである現象形態のなかで、彼らは水中の魚のように気安さを覚えるのである。
  常識が不合理と見るものは合理的なものであり、常識で合理的なものは不合理そのものであるということがあてはまるのである。
30-20 ブルジョア世界のなかに、ありとあらゆる世界のうちの最良の世界を発見しようとする親切な善意が、俗流経済学では、真理愛や科学的探求欲のどんな必要にもとって代わるのである。

 

31、豆知識

ちょっとした豆知識を集めてみました。
以下にタイトルだけを掲げます。詳しくは下記のPDFファイルをご覧下さい。

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31-1 アメリカの発見は黄金欲のおかげ
31-2 工場は英語ではいまなおmill〔水車〕と呼ばれている
31-3 1「馬力」=33,000フィード・ポンド/S
31-4 ドイツの産業では、まず良い見本を送っておいて…
31-5 仲介商業の歴史
31-6 投資銀行・ベンチャーキャピタルの奔り クレディ・モビリエ

 

32、人名

『資本論』に登場するおもな「人名」の一覧です。
以下に「人名」だけを掲げます。詳しくは下記のPDFファイルをご覧下さい。

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32-1 ケネー、フランソア (1694-1774)
32-2 ステュアート、サー・ジェームス・デナム (1712-1780)
32-3 スミス、アダム Smith,Adam  (1723-1790)
32-4 ランゲ、シモン・ニコラ・アンリ (1736-1794)
32-5 マルサス、トマス・ロバート (1766-1834)
32-6 セー、ジャン・バティスト (1767-1832)
32-7 オーエン、ロバート Owen Robert(1771-1858)
32-8 リカード、デーヴィット Ricardo,David (1772-1823)
32-9 ミル、ジェームズ (1773-1836)
32-10 シスモンディ、ジャン-シャルル-レオナール・シモンド・ド (1773-1842)
32-11 ミュラー、アダム・ハインリヒ、ニッタードルフ士爵 (1779-1829)
32-12 リスト、フリードリヒ (1789-1846)
32-13 ミル、ジョン・ステュアート Mill,John stuart (1806-1873)
32-14 プルドン、ピエール-ジョゼフ (1809-1865)
32-15 ラサール、フェルディナント (1825-1864)
32-16 ベルンシュタイン、エドゥアルト (1850-1932)
32-17 カウツキー、カール Kautsky,karl(1854-1938)