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二一世紀はどこに向かって進んでいるのか(その2)

SDGsが実現される社会とは

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SDGsが実現される社会とは

 

はじめに──国連がめざすSDGs

国連は、2015年9月に「国連持続可能な開発サミット」を国連本部において開催し、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」を採択し、貧困や飢餓、エネルギー、気候変動、平和的社会など、持続可能な発展のために2015年から2030年までに達成すべき行動計画の目標として、「持続可能な開発目標(SDGs)」(17の目標と169のターゲットからなる)を定め、2020年1月にSDGs達成のための「行動の10年(Decade of Action)」をスタートさせました。

SDGsの17の目標とは次のようなものです。

目標1(貧困)

あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる。

目標2(飢餓)

飢餓を終わらせ、食糧安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する。

目標3(保健)

あらゆる年齢のすべての人々の健康の生活を確保し、福祉を促進する。

目標4(教育)

すべての人に包括的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する。

目標5(ジェンダー)

ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う。

目標6(水・衛生)

すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する。

目標7(エネルギー)

すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する。

目標8(経済成長と雇用)

包括的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する。

目標9(インフラ、産業化、イノベーション)

強靱(レジリエント)なインフラ構築、包括的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る。

目標10(不平等)

各国内及び各国間の不平等を是正する。

目標11(持続可能な都市)

包括的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する。

目標12(持続可能な生産と消費)

持続可能な生産消費形態を確保する。

目標13(気候変動)

気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる。

目標14(海洋資源)

持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する。

目標15(陸上資源)

陸上生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する。

目標16(平和)

持続可能な開発のための平和で包括的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包括的な制度を構築する。

目標17(実施手段)

持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活用する。

この、国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、すべての人々が等しく恩恵を受けられるような経済・社会をめざし、地球の安定的で豊かな発展を保証する経済・社会の構築という課題を国際連帯のもとで実現するという、二一世紀の私たち人類の進むべき方向を示したものといえます。

 

SDGsが実現される社会とは

このように、SDGsは〝各国〟の〝すべての人々〟が等しく恩恵を受けられるような経済・社会、そして、地球の安定的で彩り豊かな発展を保証するような経済・社会の構築をめざしています。

 SDGsの目標は、〝経済は社会のため、国民のためにある〟という理念がなければ実現しません。SDGsの目標は、国家間が相手を打ち負かすような「競争」、帝国主義的な競争をしていたのでは実現しません。SDGsの目標は、知的財産権を含む財産権に基づく搾取があまねく認められているような社会では実現できません。SDGsの目標は、私的資本が大きくなることによって経済の発展を図るという発展モデルの社会では実現できません。

 つまり、個人が金銭的な利益を得ることを通じて「社会の発展を図る」という資本主義的生産様式の社会の「発展」方式とはまったく異なる、〝経済は社会のためにある〟という社会の「発展」方式に発展のしかたをパラダイムシフトすることを、SDGsの諸目標は求めています。

 

〝経済は社会のもの〟という社会はどのように実現されるか

それでは、〝経済は社会のためにある〟という社会はどのように実現されるにか。

 資本主義的生産様式の社会は、労働者が生み出した価値(〝富〟)を資本家が横取りして、労働者の過去の労働の成果である〝富〟が「資本」というゾンビとして蘇り、人間の労働の果実を喰って増殖することにより経済発展を図る、という経済システムの社会です。資本主義社会では「資本」としてゾンビになれず資本家のもとに滞留した〝富〟は、死重として経済発展の妨げになりますが、資本家は国民のことなど考えず、自分の儲けのためだけに、絶対に、その〝富〟を手放そうとはぜず、ゾンビになる日を待ち続けます。

 だから、〝経済は社会のため、国民のためにある〟という理念を実現させるためには、このような、人間の労働の果実を横取りして、資本を大きくすることによって経済の発展を図るという、資本のための経済システムとそれを支える法制度を変えなければなりません。私的所有権(特許権を含む)にもとづく搾取の自由を認める法制度を廃止して、所有権に基づく特権を廃止し、企業と経済を社会がコントロールできるようにしなければなりません。

 そして、経済を社会がコントロールできるようにするためには、企業統治のあり方を〝企業は社会のもの〟という考えが実現できるようなものに変革しなければなりません。

 こうしてはじめて、〝経済は社会のもの〟という社会が実現されます。

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