3-3-5

民主主義の発展にブレーキをかける「政党助成金」への対応

 〈目次〉

  1. 「政党助成金」廃止論が導く三つの実践的誤り
  2. 第26回大会決議の選挙制度、金権民主主義に関する記述について
  3. 民主主義社会に不可欠な言論の自由の経済的保障   〈レーニンの出版の自由についての決議案〉〈日本共産党の自由と民主主義の宣言〉
  4. 「政党助成金」制度の積極的な意義
  5. 「政党助成金」制度の問題点と改善の方途

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民主主義の発展にブレーキをかける「政党助成金」への対応

 

「政党助成金」廃止論が導く三つの実践的誤り

共産党の「政党助成金」に関する対応は、①新しい政治的潮流の勃興を抑制し、②真に必要な選挙制度改革から国民の目をそらせ、③自らの活動の幅を狭めるものとなっています。

新しい政治的潮流の拡大を阻む「政党助成金」廃止論

 ㋐「政党助成金」は政党の財政基盤を強め、国民の政治参加の可能性を広げる

 ㋑「政党助成金」の反対は、国民の意見の新しい芽ばえを抑え、既成政党の安寧を保障する。

国民の選挙制度改革の優先順位の理解を混乱させる「政党助成金」問題への対応

 ㋐現在の選挙制度の最大の問題点は、一票が正確に国政に反映されない「小選挙区制」にあり、次に問題なのは資金力のある層が政治を支配できる蓋然性が高い点にある。

 ㋑しかし、「政党助成金」についての誤った理解をもつ共産党は、衆議院選挙での議席の拡大をえて、最初にしたのが「政党助成金」の廃止法案の国会提出で、その後企業献金問題が政治問題化して「企業・団体献金」への対応をするというように、選挙制度改革の優先順位について、本末転倒の、国民の理解を混乱させるような行動をとっている。

「政党助成金」の受け取り拒否によって、自らの活動の幅を狭め、国民への資本主義の曝露の任務を弱め、結果的に資本主義擁護勢力を増長させている。

 

第26回大会決議の選挙制度、金権民主主義に関する記述について

まずはじめに、上記の②に関して、「共産党」はどのように述べているか、第26回大会決議で見てみましょう。

 まず、選挙制度について、衆議院の小選挙区制については触れられていますが、参議院、都道府県議会、政令市における一人区も民意を極端に歪めており、その改善は焦眉の課題ですが、明確な主張はなされていません。

 また、政治資金についても、企業・団体献金について、「本質的に政治を買収する」と述べられていますが、ⓐ企業・団体献金が直接的に政党の買収、政党による有権者の買収の手段となるだけでなく、ⓑお金を持っている財界・支配層が企業・団体献金をすることによって、金権政党がその資金を使って大量宣伝することにより自らの主張を国民により有利に浸透させることができ、選挙の公正性を著しく歪めていることを明確にする必要があります。そして、この金権政治の暴露は、不当な選挙制度とともに、国政選挙の都度、徹底的に行われるべきものですが、決議は「政党助成金」より後順位に位置づけており、「政党助成金」の批判に重点が置かれています。真に必要な選挙制度改革から国民の目をそらせてはなりません。これらは、直ちに、改められるべきです。

 「政党助成金」制度そのものを否定し、助成金の受け取りを拒否することが、なぜ、①新しい政治的潮流の勃興を抑制し、③「共産党」自らの活動の幅を狭めるものとなるのか、以下で見ていきましょう。

 

民主主義社会に不可欠な言論の自由の経済的保障

資本主義社会は、「お金」を独占する資本家階級が「金の力」で無産階級を経済的にも政治的にも支配しています。民主主義社会は、最初は少数意見であっても、それが正しい意見であるならば、多数意見となり政治を動かす力となることを保障する社会でなくてはなりません。そのためには、言論の自由を実質的に保障するするための経済的な保障が必要です。だから、自由の擁護者であるレーニンも日本共産党も国家による“出版の自由”の保障や「表現手段などにめぐまれない人びとにたいしても、自己の思想や主張などを発表しうるように物質的な保障を確立する」ことなどを「決議」し「宣言」しています。

 参考に、関連する「レーニンの決議」と「日本共産党の宣言」の該当する個所を転載します。

 

〈レーニンの出版の自由についての決議案〉

レーニンは1917年11月4(17)日に執筆した出版の自由についての決議案の中で「ブルジョアジーは、金持が新聞を発行し、資本家が定期刊行物を強奪する自由を、出版の自由と解してきたが、実際には、この強奪は、あらゆる国で──もっとも自由な国も例外ではなく──いたるところ、定期刊行物を金次第のものにした。

 労働者・農民の政府は、資本の圧迫のもとから定期刊行物を解放し、製紙工場と印刷所を国家の所有にうつし、一定の数(たとえば、一万人)に達した、それぞれの市民グループに、用紙ストックの適当な部分と印刷労働の適当な量とを利用する平等な権利をあたえることを、出版の自由と解している。」(第26巻P288~289『出版の自由についての決議案』)と述べ、国家による“出版の自由”の保障を、金次第の“出版の自由”からの解放と位置づけています。

 

〈日本共産党の自由と民主主義の宣言〉

日本共産党も『自由と民主主義の宣言』で、「日本共産党は、市民的自由を擁護し発展させることは、不可侵の基本的人権と国民主権の保障にとって不可欠のものだと考える。」として、「言論、出版その他表現の自由を、用紙や印刷手段の自由な利用の保障などをふくめ、擁護する。検閲を排除する。新聞、ラジ才、テレビなどの報道機関にも、政府批判をふくむ報道の自由が保障される。表現手段などにめぐまれない人びとにたいしても、自己の思想や主張などを発表しうるように物質的な保障を確立する。」と述べるとともに、レーニンよりも一歩進んで「集会、示威行進の自由、結社の自由、勤労者の団結権、ストライキ、団体交渉その他の団体行動権を全面的に擁護する。これらの権利の行使に必要な集会場その他の施設を充実する。」と述べ、社会がその充実を図ることを表明しています。

 

「政党助成金」制度の積極的な意義

日本共産党が科学的社会主義の党であり、その党員が共産主義者であるならば、その任務は、ブルジョアジーをたおすことです。“国民の新しい共同社会”を実現し、金権民主主義社会を真の民主主義社会につくりかえることです。そして、現在の主要な任務は、資本主義を暴露し、ブルジョアジーを批判し、新しい生産様式の社会への社会の移行の必然性を明らかにし、新しい生産様式の社会をつくるために大衆のあいだにブルジョアジーにたいする憎悪を呼びさまし、階級意識を発達させ、味方の勢力を大結集させることです。そのために宣伝・煽動・組織を、うむことなくおこない、なによりもまず、国民の目からウロコを落とさなければなりません。そのための宣伝・煽動にはお金がかかります。支配階級の新聞やテレビを使っての資本主義の大宣伝に対抗して、正義の大宣伝を行うにはお金がかかります。「金」と「権力」による支配を打ち破るためには私たちにもお金が必要です。資本家を打ち破って実現した“国民の新しい共同社会”を維持するためにも、“言論の自由”を一層発展させるためにも、労働者には、言論の自由を実質的に保障するするための国家による経済的保障が絶対に必要です。その経済的保障の一つが「政党助成金」制度であり、「政党助成金」は政党の財政基盤を強め、国民の政治参加の可能性を広げる積極的な意義をもっています。

 

「政党助成金」制度の問題点と改善の方途について

「政党助成金」制度について、このような観点から、以下のように考えます。

 「政党助成法」は、この法律で認める〝「政党」の要件〟と〝「政党交付金」の交付方法及び使途〟とに大きな問題があります。「政党」要件の問題点は、政党の範囲を狭め、地域政党等を「政党」と認めないことによって、「政党」と認められなかった政党は経済的に非常に不利な政治闘争をしいられ、公平性が歪められ、民主主義がほり崩されます。また、「政党交付金」の問題点として、小選挙区制といういかさま区選挙制度のもとで交付方法に議員数割があるために交付額が非常に歪められていること、そして、その使途を制限していないため、見識のない議員においては個人的な趣味に国民の血税を無制限に使う結果になるなど、国民に政治的に働きかけるための経済的な保障としての役割を果たしていないことがあります。

 このように現行の「政党助成金」制度には、改めなければならない問題点がありますが、お金のない政党の「言論、出版その他表現の自由」を経済的に保障し、政治闘争の条件を拡大するために活用することができます。問題点があるからといって、せっかく使える経済的な武器を放棄して、有権者からいただくべき財産を支持もしていない「政党」どうしで山分けされたのでは、その政党に投票した有権者はたまったものではありません。不十分であっても、もらえるものはちゃんともらって、言論の自由の経済的保障──パンフ等政策宣伝のための印刷物、政策宣伝のためのマスメディアの利用、会場使用等──のためにのみ交付金を使い、模範を示せばよいのです。

 革命を真剣に考えていないのなら、金など集まるだけ集めればよいし、パンフを出す金がなければパンフなど出さなくてもよいのです。しかし、金権政治を打ち破るには「お金」が必要なのです。そして、欠陥があり、大政党に有利であるとはいえ、政治活動を制限されることなく国家が「お金」を出す制度があるのですから、この制度を利用するのは「お金」のない労働者の党にとって当然のことです。なお、政党助成金は政党を堕落させるという人もいますが、政党助成金をもらって堕落する政党があるならば、それは自業自得です。そういう政党を私たちは大いに批判し、国民の支持を失わせればいいのです。また、どんなに民主的な制度にしても、自分の払った税金の一部が自分の支持しない政党に渡ると屁理屈をこねる人がいますが、国家が政治活動を保障するのを認めないならともかく、認める以上論外です。

 私は、金を通じて政党と資本との結びつきを強め、金とマスコミを総動員して国民の投票行動を歪め、政治を思うとおりに支配しようとする、グローバル資本の行動を暴露し、グローバル資本の手足を縛る政治闘争を発展させるとともに、国家が「政党」活動をより活発にさせるために、現在の「政党助成法」の欠陥を、大旨、下記のように改善することが必要であると考えています。

①「政党」要件を見直し、都道府県単位の得票率をベースとするなど地域政党を含む活発な政治活動が行なわれるような条件を満たすものとする。

②「政党交付金」の交付は得票数割りのみとし、使途を言論の自由の経済的保障に限定し、交付金額の上限を定め、不要な交付金は返納させる。

 「政党交付金」については、このような観点から評価し、その改善に努め、国民の中に〝by the people〟の力を育むために「政党交付金」を積極的に活用することこそ、真の科学的社会主義の党の仕事です。「日本共産党」が科学的社会主義の党の本来の姿に一日も早く戻ることを、心から、期待いたします。