3-2-1

「2004年綱領」にみる不破哲三氏の転落の証明

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「2004年綱領」にみる不破哲三氏の転落の証明

 

はじめに

このページは、まずはじめに、マルクス・エンゲルス・レーニンから科学的社会主義の党の〝綱領〟のあり方を学び、これを踏まえ、不破哲三氏が作った「日本共産党」の「2004年綱領」で述べられている「現在の日本社会の特質」、「世界情勢」、「民主主義革命と民主連合政府」及び「社会主義・共産主義の社会」についてその内容を考察し、最後に、科学的社会主義の党にとって最も大切な考えで、「2004年綱領」に欠けている決定的で致命的な欠陥について、見ていきます。

党綱領はどうつくられなければならないのか

 

党綱領はどうつくられなければならないのか

マルクスとエンゲルスは1847年に『共産党宣言』で、私たちが歴史のどこにいて、何をしなければならないかを、明瞭に示しました。そして、マルクスはヴァイデマイヤーあての手紙 (1852.3.5)でマルクスが新しくやったこととして、つぎの三つことを述べています。

1、史的唯物論を発見したこと 

2、階級闘争は必然的にプロレタリアートの独裁に導くこと

3、この独裁は、いっさいの階級の廃止と無階級社会への通過点に過ぎないということ

 この3点は、科学的社会主義の思想の〝核心〟をなすものです。

 マルクスは、1875年5月5日、ブラッケあてに『ドイツ労働者党綱領評注』を送り、この〝核心〟思想を含む科学的社会主義の思想に基づき「ドイツ労働者党綱領(ゴータ綱領草案)」の曖昧さを批判し、科学的社会主義の党の〝綱領〟のあり方を示しました。

 『評注』は、「平等な権利」とか「公平な分配」という言葉の〝資本主義社会〟での意味と資本主義社会から〝生まれたばかりの共産主義社会=共産主義社会の第一段階の社会〟における「ブルジョア的権利」の側面ももった意味との違いなど、科学的社会主義の思想を学ぶうえで大変勉強になることが満載されていますので、是非、お読み下さい。

 その一つを紹介すると、「俗流社会主義は(そしてさらに民主主義者の一部も彼らにならって)、ブルジョア経済学者たちの手口をうけついでいる。この経済学者たちは、分配を生産様式から独立したものとして考察し、またとり扱い、したがって社会主義の中軸をなす問題は分配であるというふうに説明するのだ。真の関係はとっくの昔に明らかになっているのに、なぜもういちど逆もどりするのか?」(岩波文庫P40)という文章があります。この文章と『資本論』の「労働者たちの消費能力は、一方では労賃の諸法則によって制限されており、また一方では、労働者は資本家階級のために利潤をあげるように充用されうるかぎりでしか充用されないということにとって制限されている。」(大月版④第3部第30章P619)を合わせて読むと、賃金が上がれば経済が発展すると言って労働者階級を騙している人たちの主張は、客観的に見れば、「社会主義の中軸をなす問題」を知ることによって労働者階級が発揮するエネルギーを抑え込み、資本主義社会での「労働者たちの消費能力」の「制限」の原因を隠蔽しているということが明らかになります。

 そして、マルクスの遺稿から『資本論』を完成させたエンゲルスは、その生涯をかけて、マルクスの学説をまもり、その歪曲とたたかい、マルクスの学説の正しい普及に尽力しました。

  このマルクスとエンゲルスの思想を、正しく、最も忠実に受け継いだ若きレーニンは、1895~1896年に獄中で「社会民主党綱領草案と解説」執筆し、1899年末に執筆した「わが党の綱領草案」で次のように述べています。

 綱領は、

①党の基本的な見解の定式化をおこなうこと

②党の当面の政治的任務の正確な規定をおこなうこと

③煽動活動の範囲を標示すべき当面の諸要求をしめし、煽動活動に統一性をあたえ、煽動活動をひろめまたふかめ、煽動を小さな、ばらばらな要求のための部分的、断片的な煽動から、社会民主主義的な諸要求の総体のための煽動へたかめるものでなければならないこと

④そのために、「ロシア社会民主労働党の綱領の構成部分は、つぎのようなものでなければならない」として、以下の項目を列挙しています。

(一)ロシアの経済的発展の基本的性格をしめすこと。

(二)資本主義の不可避的な結果、すなわち、労働者の貧困の増大とその憤激の増大をしめすこと。

(三)プロレタリアートの階級闘争をわれわれの運動の基礎としてしめすこと。

(四)社会民主主義的な労働運動の終局目標、この目標の実現のために政治権力をたたかいとろうとするその志向、運動の国際的性格をしめすこと。

(五)階級闘争の必然的な政治的性格をしめすこと。

(六)ロシアの絶対主義は、人民の無権利と抑圧の条件となっている点で、また搾取者を庇護している点で、労働運動の主要な妨害物であり、したがって、政治的自由の獲得──それは社会発展全体のためにも必要である──こそ党の当面の政治的任務をなしていることをしめすこと。

(七)党は、絶対主義に反対して闘争するすべての党と住民層を支持するであろうし、わが国の政府のデマ的な脆計にたいして闘うであろうということをしめすこと。

(八)基本的な民主主義的諸要求と、つぎに(九)労働者階級のための諸要求、(一〇)農民のための諸要求を列挙し、これらの要求の一般的性格を説明すること。

これらを踏まえ、日本共産党の「2004年綱領」を見てみましょう。

「二、現在の日本社会の特質」に関して

まずはじめに、現状分析、日本の経済的発展の基本的性格とその不可避的な結果の分析は正しく十分におこなわれているのか、見てみましょう。

 「二、現在の日本社会の特質」の(六)で日本の経済的発展とその不可避的な結果に係る部分が述べられていますが、そこには大きな欠落があります。

 それは、70年代以降の先進資本主義諸国の資本主義の到達点についての認識が欠落しており、その結果、日本の「産業の空洞化」のもつ意味、その負の影響等がまったく認識されていないということです。

 70年代のはじめに国内での資本主義的生産が限界に突き当たった日本の独占資本は、海外での利潤拡大に活路を求め、〝産業の空洞化〟を推し進めました。その結果、90年代後半以降、その弊害は誰の目にも明らかになります。まず、労働需給が悪化し、その結果、不安定雇用の増大、その圧力のもとでの労働条件の悪化、年金・医療財源の悪化、少子化の促進、生活扶助の増加等国民福祉全般の崩壊が急速に進みました。(詳しくはホームページ1-4「70年代始め以降、財界が進めた政策」を参照して下さい。)

 国内での〝産業の空洞化〟は、同時に、海外での資産増強、海外での活動の質的変化をもたらします。これらのグローバル資本の権益保護のため、米国の強い圧力もうけ、米国に依拠した軍事力の増強と共同行動の強化が強く求められ、国民の耳目を塞ぐ策動も強化せざるを得なくなりました。

  「2004年綱領」は、上記のようは認識が欠けているために、「大企業・財界の横暴な支配」とか「利潤第一主義」とかを抽象的に言う以外、日本の今について、どのようになっているのか、そして、なぜそうなるのかが説明できません。日本の労働条件の悪さは、戦前からの日本資本主義の発展の歴史的経過とともに、「産業の空洞化」による労働需給の悪化と資本装備率の低下とにその主たる原因がありますが、「2004年綱領」は、そのことがわかりません。だから、「日本経済にたいするアメリカの介入は、これまでもしばしば日本政府の経済政策に誤った方向づけを与え、日本経済の危機と矛盾の大きな要因となってきた」と、封建時代の主従関係のような捉え方しかできず、日本の現在の危機を捉えることのできない、およそ科学的社会主義とは無縁なドグマの展開におわっています。その結果、日本政府(自民党政府)とグローバル資本を免罪し、日本の独占資本のグローバル展開における日米両国の役割をまったく認識できません。この必然の結果として、「産業の空洞化」を視野の外に置くTPPの位置づけは、日本の労働運動全体を前進させるうえで否定的な影響を与えています。「アメリカ式の経営モデルや経済モデルを外から強引に持ち込もうとする企て」という分析(?!)も何を言いたいのかさっぱり分かりません。「アメリカ」でお茶を濁してはいけません。内容を科学的社会主義(マルクス・エンゲルス・レーニン)の目で見ることこそ最も大切なことです。

  このような、現実を踏まえた分析の欠如は「軍事面」にもおよびます。「日本政府は、アメリカの戦争計画の一翼を担いながら、……軍国主義復活の動きを推進する方向に立っている」と、〝軍国主義者〟の「日本政府」がアメリカの「戦争計画」なるものに追従するだけのものとなり、リアルな分析のかけらもありません。国内生産したものを輸出するだけの時代から、日本のグローバル資本が海外に生産拠点を拡大し、資本の海外権益が飛躍的に増大した状況のもとでの軍事の役割を、まったく、見えなくしてしまっています。

 そうした中で、「資本」と「国家」と「国民」の役割と位置づけの変化を見ることができなくなっています。

「三、世界情勢」に関して

次に、「三、世界情勢」について見てみましょう。

 世界情勢についても、科学的社会主義の見方とは縁遠い、貧弱な現状分析には目を覆いたくなります。ソ連の解体によって、アメリカは「独占資本に特有の帝国主義的侵略性」をむきだしに現せるようになったから、「いま、アメリカ帝国主義は、世界の安全と平和、諸国民の主権と独立にとって最大の脅威となっている」では、レーニンが泣く。不破さんは、レーニンが国家と独占資本の絡み合った当時の〝帝国主義〟を実証的に分析しその矛盾と社会変革の可能性を示した「帝国主義」論に罵詈雑言を浴びせたが、何の分析もなく「独占資本に特有の帝国主義的侵略性」を言うだけでは、レーニンが泣く。

 そして、「また、経済の『グローバル化』を名目に世界の各国をアメリカ中心の経済秩序に組み込もうとする経済的覇権主義も、世界の経済に重大な混乱をもたらしている」という、マルクス・エンゲルスの考えとはかけ離れた、政治主・経済従の不破さん流の逆立ちした考え方にも閉口する。経済の「グローバル化」は「アメリカ中心の経済秩序に組み込」むための「名目」ではない。経済の「グローバル化」は、グローバル資本の本能に基づく行動で、それを保証するために先進資本主義諸国はグローバル資本のためのルールを他国に押し付け、各先進資本主義国は自国の資本が有利になるような競争条件をつくるために争っている。政治主・経済従の不破さんにはそのことがまったくわからない。

 資本主義社会なのに〝資本〟を見ずに、国家だけを見ている。そこから、「各国の経済主権の尊重のうえに立った民主的な国際経済秩序を確立するための闘争」なるものが導き出される。不破さんによって、「経済の『グローバル化』」=〝グローバル資本の行動〟は「名目」にされ、その結果、〝グローバル資本〟は「民主的な国際経済秩序」の「確立」とは無縁の存在となった。さて、どんな「闘争」をするのか。何をどうしようというのか。この「主権」と「民主」が散りばめられた、間抜けな、抽象的なスローガンを理解できるのは、理解したつもりになって、その実、まったく理解していないひとくらいのものだろう。問題の所在を明確にせず、最後に、南無〝社会主義〟と唱えたところで、国民の力を引き出すことなど、絶対に、できません。

*なお、レーニンの時代の「帝国主義」、「資本」と「国家」と「国民」の役割と位置づけ等についての詳しい説明は、ホームページ4-13「☆レーニンの資本主義観、社会主義経済建設の取り組み、革命論への、反共三文文筆家のような歪曲と嘲笑、これでもコミュニストか」を参照して下さい。

 「三、世界情勢」には、グローバル資本の動き、余剰マネーの動き等が、完全に、欠落しています。

 グローバル資本はその世界展開の中で、①新興国(工業化国)での低賃金労働と自国の労働者の労働条件の悪化の強制、②資源国での支配層と結びついた資源の収奪、そして、③利益の隠匿等を行っています。そして、実物経済で使い道のない余剰マネーは実物経済を攪乱させるマネーゲームに使われ、バブルの崩壊によって実物経済を破壊します。

 エネルギー、穀物、情報技術、金融、そして、軍事を含む多くのグローバル資本を抱える米国は、彼らが利益を求めて傍若無人の行動を行うためのルール作りと危機対応、そして、新しい市場の開拓をおこなっています。私たちは、利益を求めて傍若無人の行動をするグローバル資本のためのこの歪んだ構造を糺さなければなりません。そのためには、グローバル資本の行動と資本主義国家の行動を具体的に暴露し、グローバル資本と資本主義国家を追い詰めるたたかいが必要です。

 ソ連の解体によって、アメリカは「独占資本に特有の帝国主義的侵略性」をむきだしに現せるようになったから、「最大の脅威」だなどと言っていたのでは、「ウラー」と叫んで突進するだけの人たちは満足させても、〝世界情勢〟を明らかにしたことにはなりません。

※なお、私たちが国際社会とどう向き合うべきかについて、ホームページ2-4「国際社会とどう向き合うか」でより詳しく見ていますので、是非、参照して下さい。

「四、民主主義革命と民主連合政府」に関して

「四、民主主義革命と民主連合政府」に関しては、これまで指摘してきたことを踏まえて、見直す必要があります。特に以下の点に留意する必要があります。

①〔国の独立・安全保障・外交の分野で〕の中の「大企業の無責任な活動」とか「一部の大国の経済的覇権主義」等の科学的社会主義の思想になじまない表現を改め、テロや紛争について科学的社会主義の立場で明快に記述すること。

②〔経済的民主主義の分野で〕に関して、付加価値の増大がなければ国民の豊かな生活はないので、日本の存亡に係る「産業の空洞化」からの経済の回復を民主的改革の第一にすえなければならない。また、「能力に応じた負担」という表現は資本主義社会の階級性を隠蔽するものなので、搾取と不労所得の社会への還元の観点からの具体的な税の仕組みを提示する必要がある。個々の課題(TPP、派遣、福祉、税、etc)に対するマルクス主義的な分析と批判と提案をおこない、旗幟鮮明な当面の目標を示すこと。

「五、社会主義・共産主義の社会をめざして」に関して

「五、社会主義・共産主義の社会をめざして」の「生産手段の社会化」に関して、「生産者を抑圧する官僚専制の体制をつくりあげた旧ソ連の誤りは、絶対に再現させてはならない」として、「独自の形態の探究」の重要性を指摘しています。

  しかし、「旧ソ連の誤り」は独自の「形態」の探究の問題ではありません。「旧ソ連」では、マルクス・エンゲルス・レーニンがもっていた革命論が捨て去られ、「党」が国民と国家を支配し、その「党」は自由な意見交換の場をもたない歪曲された非民主的な「民主集中制」──それは、現在の「日本共産党」の「民主集中制」と区別をつけるのは難しい──が支配していたからです。

 だから、「旧ソ連の誤り」に論及するときには、「党」のあり方とともに「党」と「国民と国家」との関係・あり方を問題にしなければなりません。当時の「旧ソ連」における「生産手段の社会化」とは国家が生産手段を所有するというだけのことで、マルクス・エンゲルス・レーニンが抱いていた〝社会主義の理念〟のかけらもないものです。マルクス・エンゲルス・レーニンが抱いていた「生産手段の社会化」とは、レーニンが「記帳と統制」のなかで最も重視した〝民主主義〟の貫徹、つまり、社会化された生産手段の「全人民の民主主義的管理を組織することを通じて社会主義を組織すること」です。

 ものの生産とともにサービスの提供を含む社会主義的経済有機体の社会的生産を徹底させるためには、生産点において国民(労働者)の参加のシステムを構築して〝民主主義〟を実現する必要があり、そのためには、〝民主主義〟の主体である一人一人の国民(労働者)が自立した判断力をもった社会の主人公として成長し、〝by the people〟の自覚をもった個人の集団が社会と政治の主人公になることが必要です。

 科学的社会主義の党の歴史的任務は、そのような社会をつくるための労働者階級のお手伝いをすることです。そのような〝党〟の役割についての、より詳しい説明は、ホームページ3-3-6「〝前衛党〟は市民革命の助産師に徹しよう 」を参照して下さい。

 グラムシは「知識と道徳の革新は、経済改革のプログラムと結びつかずにはいられない。というよりも、経済改革のプログラムこそが、あらゆる知識・道徳改革の具体的なありかたなのだ」と言っていますが、「全人民の民主主義的管理を組織することを通じて社会主義を組織すること」、これが、不破さんが「夢が無い」という「生産物の分配の仕方」をきめる生産関係のあり方であり、それは「知識と道徳の革新」と固く結びついて前進します。だから、「夢が無い」という不破さんは、残念ながら、〝思考能力が無い〟んです。

 「旧ソ連の誤り」をいうのであれば、「全人民の民主主義的管理を組織することを通じて社会主義を組織する」という〝社会主義建設の理念〟を明確にして、「知識と道徳の革新」と結びついた〝民主主義〟の発展としての「生産手段の社会化」における社会主義的経済有機体の運営主体のあり方が「旧ソ連」において存在していたのかどうかを検証すべきです。「旧ソ連の誤り」は、「独自の形態の探究」などというべき問題ではなく、科学的社会主義の思想からの逸脱であり、科学的社会主義の思想にとって許すことのできない根本の「誤り」です。

※不破さんが「夢が無い」という「生産物の分配の仕方」についての詳しい説明は、ホームページ4-18「☆「人間の発達」は資本主義を社会主義に変え、生産力を発展させなければ保障されない」及びホームページ4-16「☆不破さんは、エンゲルスには「過渡期論」が無いと言い、『国家と革命』と『空想から科学へ』は「マルクスの未来社会像の核心」を欠いていると誹謗・中傷する」等を参照して下さい。

「2004年綱領」には致命的な欠陥、決定的に欠けているものがある

「綱領」に欠けてはならないもの

「2004年綱領」には致命的な欠陥、決定的に欠けているものがありますので、最後に、見ていきましょう。

 レーニンは、「社会民主党綱領草案と解説」(1895~1896年執筆)と「わが党の綱領草案」(1899年末執筆)とで、党の任務について次のように述べています。

 まず、「社会民主党綱領草案と解説」で、「B 一 ロシア社会民主党は、労働者の階級的自覚を発達させ、彼らの組織化に助力し、闘争の任務と目標とを指示することによって、ロシアの労働者階級のこの闘争を援助することを、自分の任務として宣言する。」と、自らの任務をあきらかにし、「わが党の綱領草案」では、先に「党綱領はどうつくられなければならないのか」で見たように、綱領は①党の基本的な見解の定式化と②党の当面の政治的任務の正確な規定をおこない③煽動活動の範囲を標示すべき当面の諸要求をしめし、煽動活動に統一性をあたえ、煽動活動をひろめまたふかめ、煽動を小さな、ばらばらな要求のための部分的、断片的な煽動から、社会民主主義的な諸要求の総体のための煽動へたかめるものでなければならないことを述べ、そのための「綱領の構成部分」の(三)~(五)として、以下の項目を列挙しています。

(三)プロレタリアートの階級闘争をわれわれの運動の基礎としてしめすこと。

(四)社会民主主義的な労働運動の終局目標、この目標の実現のために政治権力をたたかいとろうとするその志向、運動の国際的性格をしめすこと。

(五)階級闘争の必然的な政治的性格をしめすこと。

 レーニンは、このように、「綱領」に、労働者階級と〝党〟の関係を正しく位置づけ、闘う方向を明らかにすることを求めています。対する、不破さんが作った「2004年綱領」は、どのようなものか、一緒に見てみましょう。

※なお、参考として、ロシア社会民主党綱領の作成過程でのレーニンの貢献の足跡を抜粋したPDFファイルを添付しました。大変勉強になりますので、是非、お読み下さい。その中に「社会民主党綱領草案と解説」と「わが党の綱領草案」も入っています。

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3-3-1-添付資料 ロシア社会民主党綱領の作成過程でのレーニンの貢献.pdf
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「2004年綱領」は労働者階級をどう位置づけ

「党」をどう位置づけているのか

「2004年綱領」は、その冒頭で「科学的社会主義を理論的な基礎とする政党として、創立された」ことが述べられています。しかし、その「科学的社会主義を理論的な基礎とする政党」の綱領であるはずの「2004年綱領」には、「労働者階級」という言葉が二カ所に出てきますが、その歴史的使命とのかかわりで使用されているわけではなく、「党」が戦前に「労働者階級の生活の根本的な改善」の「ためにたたかった」ことと、「労働者階級」が「独立、平和、民主主義、社会進歩のためにたたかう世界のすべての人民」の一員として数えられているだけです。

 その結果、日本の「民主主義的な変革」をめざす運動について、「日本共産党」が「先頭にたって推進する役割を果たさなければならない」とし、「日本共産党と統一戦線の勢力が、国民多数の支持を得て、国会で安定した過半数を占めるならば、統一戦線の政府・民主連合政府をつくることができる」と述べているだけで、自ら重い〝議会主義的クレチン病〟患者であることを告白しています。

 先に、「これらを踏まえ、日本共産党の「2004年綱領」を見てみましょう」の「Ⅳ、「五、社会主義・共産主義の社会をめざして」に関して」の項で、「2004年綱領」には、社会化された生産手段の「全人民の民主主義的管理を組織することを通じて社会主義を組織すること」、つまり、〝民主主義〟を組織することが欠落していることを指摘しましたが、「2004年綱領」には、新しい生産様式の社会の実現のための必須事項である民主主義を組織すること、そのために、その中核となる労働者階級を組織することが抜け落ちています。その結果、あるのは「議会主義」のカケラ(断片)だけで、「党」への支持の拡大を電話で猫撫で声で訴えるだけの、国民が民主主義と政治への自覚を高める視点など皆無に等しいものです。

「2004年規約」は労働者階級をどう位置づけ

「党」をどう位置づけているのか

このような「綱領」とセットの「規約」だから、推して知るべしだが、「規約」の関連する部分を見てみましょう。

 「綱領」には「労働者階級の党」らしい記述はまったく見当たりませんでしたが、「規約」では、党の性格として、「科学的社会主義を理論的な基礎とする」「労働者階級の党」であることが述べられているから驚きです。しかし、「規約」で「労働者」と関連すると思われる言葉として出てくるのは「経営」という言葉と「職場」という言葉ですが、「経営」という言葉は「補助指導機関」を設ける場合のジャンルの一つとして掲げられているだけで、「職場」は労働者のいる場所らしいが、その「職場」の党員の「任務」は、「支部の任務」として、「その職場、地域、学園で多数者の支持をえることを長期的な任務とし、その立場から、要求にこたえる政策および党勢拡大の目標と計画をたて、自覚的な活動にとりくむ」ことが挙げられているだけです。

 科学的社会主義の党は〝労働者階級の解放〟のため、「労働者の階級的自覚を発達させ、彼らの組織化に助力し、闘争の任務と目標とを明確に示して、労働者階級の闘争を援助する」ことを使命としているのではないか。〝労働者階級の解放〟のために職場で階級的な団結を組織し、地域で住民の民主的なイニシアティブを組織することが科学的社会主義の党の本来の目的ではないのか。そのことを通じて、〝by the people〟の思想と力を培っていくのが〝前衛党〟の仕事のはずです。

 しかし、現在の「共産党」の「規約」は、「党」が「職場、地域、学園で多数者の支持をえること」を「長期的な任務」とし、「その立場から」「要求にこたえる政策」をつくって「活動」することが求められる。「共産党」が「職場、地域、学園で多数者の支持をえる」ために「政策」を作ったり「党勢拡大」をするという。これでは本末転倒の極みではないのか。

 どうやら、「規約」でいう「労働者階級の党」とは、国民の多数者である「労働者」を「共産党」の支持者にするために労働者にアピールするためのキャッチコピーらしい。このように、レーニンの綱領に示された党の任務と不破版「2004年綱領・規約」とでは、その〝こころざし〟がだいぶ違う。

  正しく情勢を摑むこと、正しく運動を組織すること、この単純なことがちゃんと行われれば運動は必ず前進します。そのためには、科学的社会主義の思想から転落した不破版「2004年綱領」のこれらの誤りを克服しなければなりません。

共産党よ元気をとりもどせ。蘇れ!Communist Party。