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2015年8月からタイムマシンに乗って、日本を遡る

数字が語りかけるもの

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2015年8月からタイムマシンに乗って、日本を遡る

2015年8月は、このホームページを作成しはじめた時である。まず始めに、日本経済はどのような状況なのかを見てみよう。

2015年4~6月期

GDP実質年1.6%減

企業好調

これは、2015/08/18付け『日経新聞』で報じられたGDP速報値の記事の見出しの一部です。同記事によれば、「4~6月期は企業業績が好調だったのに国内総生産(GDP)はマイナスに陥った。GDPと企業収益が連動しないのは、企業が海外で稼いだ利益が国内の投資や賃金に回っていないためだ」といい、「日本経済新聞社の集計では、上場する3月決算会社(1532社)の4~6月期の決算から集計した経常利益の合計は、前年同期比で24%増え、9兆円を超えた。金融危機前の07年4~6月期を8年ぶりに上回り、過去最高を更新した」という。そして、「全雇用者への賃金総額を示す雇用者報酬は4~6月期に実質で前期比0.2%減った。設備投資も0.1%のマイナスだった」という。これほどはっきりと「産業の空洞化」の結果が示され、これほど鮮やかに「グローバル資本」が日本経済の発展の〝桎梏〟となっていることを示している例はない。

 

GDP大幅減でも利益増

2014年4~6月期

同じく『日経新聞』(2014/09/09)によれば、消費増税後の2014年4~6月期のGDPは年率換算で△7.1%と大幅に落ち込む反面、主要128社の営業利益は前年同期比3%増と3期連続の増益を確保したという。 摩訶不思議な現象だ!

 

戦後最長の景気回復も国民のふところ潤わず

2002年1月を「谷」として始まった「いざなぎ景気」を超える戦後最長の景気回復は、グローバル企業が高度成長期並みの成長を取り戻す一方、中小企業・非製造業は長期低迷のままで、名目雇用者報酬はマイナス、デフレも続き、景気回復局面でも国民のふところ潤わず。

 このように、「産業の空洞化」によって、「好景気」のときに資本はわずかばかりの「アメ」をくれるという、マルクスも認めた資本主義的生産様式の常識さえ実現することができなくなってしまいました。

 

「産業の空洞化」の結果の顕在化

1995年から消費価格指数の低下が始まり、不安定雇用が増加し、1998年から名目賃金指数も低下し、現在にいたる。

 このように、1995年から「産業の空洞化」による国民生活へのマイナスの影響が顕在化します。

 

製造業の就業者数

1973年にその勢いを失い

1995年以降減り続ける

製造業の就業者数は1955年に約750万人前後から、1973年まで急増し約1400万人になり、1995年以降は5年毎に約90万人ずつ減り続け、2005年には1150万人となります。

 若干詳しく見ると、1955年に約750万人前後であった製造業は1973年までは急増し約1400万人(従業者数1196万人)になり、その後1979年には約1350万人(同、約1100万人弱)と若干減少したあと再び上昇して1990年に約1500万人(同、1179万人)となり、1970年から1995年まで、25年以上にわたり1400万人弱から1500万人(同、1200万人弱から1100万人弱)の雇用水準を保っていたが、その後雇用は急減し、5年毎に約90万人ずつ減り続け、2005年には1150万人(同、約850万人となります。

 製造業の就業者数の推移(5年毎の)をより詳しく産業別にみると、繊維・衣服、窯業、鉄鋼、木材、化学、紙パ、家具、石油が70~75年をピークに、精密機械が80年、輸送機械が85年、電気機械、一般機械、金属、ゴム、皮革が90年にピークをつけ、95年ピークの飲食料のを除く全ての産業で90年以降就業者数が減少することとなった。このように資本主義の基幹産業である製造業は1973年にその勢いを失い、約25年の停滞を経て、95年以降、全ての産業で就業者数が減少することとなります。

注)私は学者ではないので、上記の数字は経産省資料の図表からアバウトに割り出したものです。傾向等を理解するための補助的手段として正確性については大目にみて下さい。

 

儲けた金は国内での投資ではなく、借金返済へ

日本の資本金10億円以上の企業の自己資本比率は75~76年の15%前後から2010年には43%に、30年以上にわたりほぼ一貫して上昇してきました。

 

失業率は70年の1.1%をボトムに1995年に3%を突破し……

日本の失業率は、60年の1.7%から70年の1.1%をボトムに76年には2.0%を突破し、その後約10年間2%を維持していたが95年には3.2%と3%を突破し、98年には4%を突破し02年には5.4%とピークを打ち、以降4%台で推移している。

 このことが労使の力関係を変え、労働条件を変え、社会保障を脆弱にさせ、高齢化社会を促進させた。

これらに、労働組合の組織率や非正規雇用者率等の状況を加えてもよい。

〈参考〉

下記の記事

書籍も参照して下さい。

『日経』2014.9.14羅針盤 企業収益とGDPの溝

水野和夫氏『人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』(2007年)『資本主義の終焉と歴史の危機』(2014年)

大瀧雅之東大教授『平成不況の本質』(岩波新書)

エマニュエル・トッド氏の著作

今度は、2015年8月からタイムマシンに乗って、日本の近未来を数字で見てみよう

これらをもたらした〝資本の行動〟とはいったいどのようなものだったのかを、次のページ以降で見ていきますが、もう少しこのページに留まり、2015年8月以降の日本の近未来を数字で見ることにしましょう。

 

〈直接投資の残高〉

〈直接投資の残高〉財務省国際収支統計(速報)『日経新聞』(2019/02/09付け)

1997年→2018年

 約35兆円→185兆円(9月末)

〈対外直接投資の順位〉日中友好新聞(2021年12月1日)

2018年 日本 一位

2019年 日本 一位

2020年 中国 一位

 

〈海外生産比率、海外売上高比率の推移〉

わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告(国際協力銀行2020年度)

 〈年 度〉 2002→2008→2013→2018→2019

海外生産比率  26.0→30.8→35.2→36.8→33.9

海外売上高比率27.9 →34.7→37.5→38.7→36.2

2019年度は、年度末にかけて、新型コロナの感染拡大により売上げ・生産いずれも大きく影響を受け、これまで上昇基調にあった海外売上・生産比率はおよそ10年前の水準まで逆戻りし、過去最大に落ち込み幅を記録した。

※海外生産比率とは、(海外生産高)/(国内生産高+海外生産高)

※海外売上高比率とは、(海外売上高)/(国内売上高+海外売上高)

※各比率は、回答企業の申告値を単純平均したもの。

 

〈日本の貿易輸出額の推移〉

日本の貿易輸出額は、1980年(昭和55年)に130.44 だったものが、1995年(平成7年)まで順調に伸び443.12となったが、2002年(416.73)まで足踏みをし、その後、2003年(471.82)から2008年まで伸びて781.41 となり、リーマン・ショックにより2009年に急落して580.72となり、その後2011年にピークを付け823.18 となり、2017年現在698.13となっている。*単位:10億USドル

日本の設備投資

停滞の20年……総量1割増どまり

(「日経」電子版2021/12/05)

〈生産的資本ストック〉〈経済成長率〉

  2000~2020年          2001年~2019年

日本    9%増            年平均0.8%

米国   48%増                 2.1%

英国   59%増                 1.8%

フランス 44%増

ドイツ  17%増

「日本企業も海外では積極的にお金を使う。対外直接投資はコロナ前の19年に28兆円と10年前の4倍に膨らんだ。コロナ後も流れは変わらない。」(同電子版のコメント)

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