日本社会の深刻な危機はいつ始まったのか

日本資本主義の終わりの始まり

日用品が充足され、豊かさを感じはじめた時から、日本社会の深刻な変化が始まった

 

〝資本主義の「黄金時代」〟

1950年代、60年代は、高い経済成長が実現し、労働者の失業率は非常に低く(2.1%程度)、労働組合の組織率も継続的に上昇し、雇用保護法の整備が進み、失業給付金補償率も上昇し、〝資本主義の「黄金時代」〟と言われた、資本主義社会が我が世の春を謳歌した時代でした。

 そして、1960年代末から70年代の始め頃までは、人口の都市への急激な流入、農村の疲弊、公害問題等さまざまな問題を含みながらも、日本経済は発展し、国民の生活も豊かになって行きます。

 

日本資本主義の終わりの始まり

しかし、70年代に入り、日用品が充足され、豊かさを実感しだしたとき、日本の高度経済成長は徐々に終えんに向かいはじめます。それは同時に、泳ぎ続けなければ死んでしまうマグロのように、拡大・増殖し続けなければ存在価値を失う〝資本〟の運動によって成り立っている資本主義的生産様式の社会の、日本における終えんの始まりであり、資本主義的生産様式の社会の歴史的役割の賞味期限が切れたことの現れのサインでもありました。

 こうした中で、国家と二人三脚でやってきた日本の〝資本〟の行動に変化があらわれ、現在の日本の社会・経済を襲っている深刻な危機の種が蒔かれはじめます。しかし、この時を起点とする40年後の日本社会の大変化など、当時、知るよしもありませんでした。

統計で、ちょっと未来を覗いてみよう

 

失業率・製造業就業者数・自己資本比率の推移

〈失業率〉1970:1.1%─→2002:5.4%

〈製造業就業者数〉1973:1400万人─→ 2005:1150万人

〈自己資本比率〉1975:15% ─→ 2010:43%

失業率は増加し、製造業就業者数は減少し、企業は儲けを貯め込む。

日本の設備投資、停滞の20年

総量1割増どまり

(「日経」電子版2021/12/05)

〈生産的資本ストック〉〈経済成長率〉

    2000~2020年     2001年~2019年

日本     9%増        年平均0.8%

米国   48%増               2.1%

英国   59%増               1.8%

フランス 44%増

ドイツ  17%増

「日本企業も海外では積極的にお金を使う。対外直接投資はコロナ前の19年に28兆円と10年前の4倍に膨らんだ。コロナ後も流れは変わらない。」(同電子版)

 

〈海外生産比率、海外売上高比率の推移〉

わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告(国際協力銀行)

 〈年 度〉  2002   2008  2013    2018   2019

海外生産比率   26.0→30.8→35.2→36.8→33.9

海外売上高比率  27.9→34.7→37.5→38.7→36.2

※海外生産比率とは、(海外生産高)/(国内生産高+海外生産高)

※海外売上高比率とは、(海外売上高)/(国内売上高+海外売上高)

※各比率は、回答企業の申告値を単純平均したもの。

海外生産比率、海外売上高比率とも〝着実〟に比率を伸ばしています。ただし、2019年度は、年度末にかけて、新型コロナの感染拡大により海外での生産と売上のいずれも大きな影響を受け、これまで上昇基調にあった海外売上・生産比率はおよそ10年前の水準まで逆戻りし、過去最大の落ち込み幅を記録した。

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数字が語りかけるもの