4-24.総括Ⅱ

マルクス・エンゲルス・レーニンへの誹謗中傷から現れる不破哲三氏の革命論

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マルクス・エンゲルス・レーニンの革命論

資本主義的生産様式の社会から〝国民の新しい共同社会〟への革命論

 マルクス・エンゲルス・レーニンの革命論は、資本主義的生産様式の社会、つまり生産手段と生産から生まれる富の私的資本主義的所有の社会から〝国民の新しい共同社会〟への革命論です。
 社 会全体がつながりを強め高い生産性をもつ資本主義社会は、バランスのとれた富の配分と大きな景気変動なしの一層の生産性の向上のために、資本の私的所有を やめ富を必要な分野へ円滑に移動できる社会、〝国民の新しい共同社会〟へ生まれ変わらなければなりません。そして、この「富を必要な分野へ円滑に移動でき る社会」は国民各自が自主的な判断をもって自らの意思で正しい決定をくだすことのできる社会でなければなりません。そのために、各自が判断能力を持った個 人として発達することが必要であり、社会の中核であり純粋無垢な階級である労働者階級の役割は、とりわけ大きい。
 そ のような歴史展開を理解したマルクスとエンゲルスは、全ての国民が新しい共同社会の担い手として社会の主人公としてその役割を果たすために、その革命を担 う中核としての〝労働者階級〟を発見し、その歴史的使命を自覚させるための〝前衛党〟の役割を明らかにしました。この思想を受け継いだレーニンは「全勤労 大衆の国事参加を民主主義的に組織し、全人民の民主主義的管理を組織する」ことを社会主義建設の基本にすえ、そのために尽力しました。
 これがマルクス・エンゲルス・レーニンの革命論の中心点です。

不破哲三氏の革命論

 こ のことを理解しようとしない不破さんは、マルクスに「恐慌=革命」説なる濡れ衣を着せ、レーニンが「帝国主義段階を『死滅しつつある資本主義』と規定し」 たことが「『革命近し』という世界的危機論の裏付けにもなった」と述べ、「それらの発言からからもうほぼ百年たちましたからね」とレーニンを揶揄する。
 繰 り返しますが、マルクス・エンゲルス・レーニンの革命論は「全勤労大衆の国事参加を民主主義的に組織し、全人民の民主主義的管理を組織する」ことによって 〝国民の新しい共同社会〟をつくるために、その革命を担う中核としての〝労働者階級〟を発見し、その歴史的使命を自覚させるための〝前衛党〟の役割を明ら かにしたことです。
  マ ルクス・エンゲルスの時代の〝恐慌〟とレーニンの時代の〝帝国主義〟は、それぞれの時代の〝矛盾〟の集中的な現れであり、であるがゆえに運動の環となり、 〝労働者階級〟にその歴史的使命を自覚させるためのそれぞれの時代の最重要な〝事実・材料〟です。だから、マルクスもエンゲルスも〝恐慌〟を「政治的変革 の最も強力な槓杆のひとつである」と考えていましたが「そのあとの繁栄の回帰は、革命を挫折させて反動の勝利を基礎づける」ものであると考え、「恐慌=革 命」説なる陳腐な思想などもっていませんでした。
 し かし、不破さんは、マルクスは「恐慌=革命」説なる考えを持っていたが、1865年に「恐慌の運動論」を発見し、革命観・資本主義観の大転換をして「革命 は、労働者階級が無準備のままで始まるものではない」と思うようになったと言います。この言葉は、マルクス・エンゲルス・レーニンの革命論をまったく理解 していないからこそ出てくる言葉です。
 不破さんのいう「恐慌=革命」説は、マルクス・エンゲルス・レーニンの革命論をまったく理解しない、不破さん自身が持っていた、革命の主体と本質を捉える観点を欠落させた思想が生みだした、不破さんオリジナルな「革命論」です。
  この ような革命の主体と本質を捉える観点を欠落させた「革命論」を持つ不破さんは、〝国民の新しい共同社会〟を実現するために、民主主義の担い手をつくり、民 主主義を実現するのではなく、電話で猫なで声で「共産党」への支持を訴えることによって「民主的ルール」づくりの夢を追い、「〝指揮者はいるが支配者はい ない〟──生産現場でこういう人間関係をつくりあげ」ることを社会主義社会の理想にしています。この不破さんの社会主義像は、マルクス・エンゲルス・レー ニンが考えた未来社会、「諸個人が分業に奴隷的に従属することがなくなり」、恒常的な「指揮者」などいない社会とは異なります。このように、不破さんの運 動論、「未来社会」像には主体的な諸個人が欠けています。

いま革命運動に求められるもの

運動の環をつかむこと

──資本主義の発展段階を正確に具体的につかむ──

  21世紀になって、マルクスが革命観・資本主義観の大転換をしたことを「発見」し、「激しい理論的衝撃」を受けた不破さんは、いままで自分が持っていた 「恐慌=革命」説なる羮に懲りて膾を吹くわけではないが、「政治的変革の最も強力な槓杆のひとつ」を見つける努力を完全に放棄しています。
  マ ルクス・エンゲルスの時代に〝恐慌〟を、レーニンの時代の〝帝国主義〟を曝露したことは、それぞれの時代の「政治的変革の最も強力な槓杆」の曝露であり、 不破さんに非難される筋合いのものではありません。逆に、グローバル資本の行動に目をつぶり、「賃金が上がれば経済がよくなる」とデマを流してグローバル 資本の行動を免罪している不破さんたちこそ非難されなければならないのではないでしょうか。
  いま必要なのは、グローバル資本の行動の結果ひき起こされた「産業の空洞化」、「雇用の海外移転」による日本経済と日本社会におよぼす深刻な影響を徹底的 に曝露し、グローバル資本の行動を規制する国民世論を早急につくりだすことです。しかし、いまの「共産党」にはそのような危機意識はまったくありません。
 なお、〝日本の危機〟については、HP「今を検証する」等を参照して下さい。また、「大転換した資本主義観」については、HP「不破さんの資本主義社会のとらえ方」を参照して下さい。現在校正中!!

〝革命の主体〟を生みだす〝前衛党〟の役割

  エンゲルスは『反デューリング論』で、科学的社会主義(プロレタリア運動の理論的表現)の任務は、プロレタリアートに世界解放の事業を遂行することがかれ らの歴史的使命であることを意識させることであると述べています。そして、マルクスとエンゲルスは『共産党宣言』で「かれら(労働者階級──青山)の闘争 の本当の成果は、その直接の成功ではなくして、労働者のますます広がっていく団結である」ことを述べ、「科学的社会主義の任務」を果たすために、その生涯 を捧げました。
 このことをマルクスとエンゲルスから学んだレーニンは、『社会民主党綱領草案と解説』(全集第二巻P77~99、ホームページ「レーニンの著作の抜粋B・党」のPDF4-1参照)で、労働者党の労働者への援助の内容について次の三項目をあげています。
第1は労働者のもっとも緊切な必要の充足のための闘争において労働者に助力することによって労働者の階級的自覚を発展させること。
第2は労働者の組織化に助力すること。
第3は闘争の真の目標を示すこと。
 こ のように、マルクス・エンゲルス・レーニンの三人が異口同音に言っていることは、①科学的社会主義の任務は、プロレタリアートに世界解放の事業を遂行する ことがかれらの歴史的使命であることを意識させることであるということ。②労働者階級の闘争の本当の成果は労働者のますます広がっていく団結であり、労働 者党の任務は労働者の階級的自覚を発展させ労働者の組織化を助けることであり、〝by the people〟の担い手である自覚的な個人をウンカのごとく創り出すことであるということ。③そのために、労働者党は闘争の真の目標をハッキリと示すとい うことです。つまり、資本主義の矛盾の現在の現れを暴露し、闘争の真の目標を大衆に示し、宣伝・煽動を徹底するということです。
  こ のように、〝前衛党〟の役割は、国民に未来を示し、〝国民の新しい共同社会〟の自覚的な担い手をウンカのごとく創り出すことです。そのような立場、観点を もって労働者、市民、国民と接しなければなりません。是非、HP「時々刻々」の「〝前衛党〟は市民革命の助産婦に徹しよう」も参照して下さい。

不破さんの貧困な革命観では社会は変わらない

  前述のように不破さんは、マルクスは「恐慌=革命」説なる考えを持っていたが、1865年に「恐慌の運動論」を発見し、革命観・資本主義観の大転換をして 「革命は、労働者階級が無準備のままで始まるものではない」と思うようになったと言っています。そして、不破さんがこのことを「発見」したのは21世紀に なってからのことであることを『前衛』No903、916、917号で述べ、この「恐慌の運動論」に「激しい理論的衝撃」を受けたそうです。
 21 世紀になるまで、不破さんは、『共産党宣言』や『資本論』をどんな観点をもって読んでいたのでしょうか。そして、21世紀になって不破さんが「発見」した 「革命は、労働者階級が無準備のままで始まるものではない」という「革命観」は、〝革命観〟としてはあまりにもお粗末ではありませんか。「自由な時間」を 使って研究三昧にふけっていられる身分だとしたら、マルクス・エンゲルス・レーニンの本当の〝革命観〟に到達するのはそれほど難しくはないはずです。
  グ ローバル資本の行動など眼中になく、「賃金が上がれば日本経済はよくなる」という言葉を信じ、支部の会議で意見が出れば「難しいことは中央に聞いてくれ」 と言い、支部の意見を委員会に上げれば「討議する時間がなかったから上級機関にあげときました」と言う支部や党委員会にとっては、不破さんが、「革命は、 労働者階級が無準備のままで始まるものではない」、これが私が21世紀になって到達した「革命観」だ、だから『赤旗』を増やし、「党員」を拡大することに 力を注ぐようにと言ったとしても、何の疑問もないのかも知れない。しかし、そんなことをしていたのでは、100年たっても、「共産党」が一定の役割を担う 革命など絶対に起きないだろう。
  不破さんの「革命観」に関するコメントは以上ですが、説明不足な点等を補っていただくため、HP4-19「☆不破さんは、マルクスが1865年に革命 観・資本主義観の大転換をしたという、レーニンも気づかなかった大発見を、21世紀になっておこない、マルクスの経済学をだいなしにしてしまった」と HP4-20「☆『社会変革の主体的条件を探究する』という看板で不破さんが『探究』したものは、唯物史観の否定だった」も、是非、ご参照下さい。

プロローグ

 なお、不破さんが「激しい理論的衝撃」を受けたという「恐慌の運動論」なるものは、「恐慌を資本の現象的な流通形態から説明する」もので、経済についての知識を持っていれば、現代の私たちにとっては、一般的には、「激しい理論的衝撃」を受けるようなものではありません。しかし、不破さんが「激しい理論的衝撃」を受け「大転換した資本主義観」とはどういうものなのか。HP「不破さんの資本主義社会のとらえ方」を、是非、お読み下さい。現在校正中!!