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那覇市での不破さんの講演に欠けているもの

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私がこのページを作った理由

 最近『赤旗』に、不破さんが2016年3月16日に沖縄那覇市内で行った「沖縄県民が主人公の、基地のない平和な沖縄への展望」という講演の内容のパンフレットの宣伝が載っています。
 私は、同年の1月に沖縄の辺野古を訪れて、宜野湾市長選にふれてきた者として、宜野湾市長選に敗れたあとの不破さんの沖縄での講演だったので、多少の期待をもって『赤旗』に載った講演要旨を読ませていただきました。その結果、この講演の内容と沖縄の現実とには大きなギャップがあると感じましたので、これまで公開したHP3-2-6「〝前衛党〟は市民革命の助産婦に徹しよう」と3-2-8「参院選の教訓──前衛党が学ぶべきものを中心として」で触れてまいりました。
 しかし、今回再び、不破さんの講演内容がパンフとして大々的に『赤旗』で宣伝されているのを見て、多くのみなさんに沖縄の現状を知っていただき、戦いの方向性を理解していただきたいと思いこのページを作成いたしました。不破さんの講演内容のパンフをお読みになった方は、是非、このページもお読みいただき、沖縄問題を一層深く考えて下さい。

私の見た沖縄

 天皇と日本のために、占領地としてアメリカに捧げられた沖縄は、まるで「DV野郎」が力ずくでいうことをきかせ、希望を失わせておいて僅かなご褒美を与えるように、今また、有無をいわぜず辺野古に新基地建設を強行し、漁師に一日5万円の海の見張り料をあたえてその心を蝕み、「日米同盟」のためと、それが正義ででもあるかのように、厚顔無恥に言い放つ、「DV野郎」と同じ精神構造をもった連中に、もてあそばれています。
 その結果、本来なら、太平洋の彼岸と大陸と東南アジアを結ぶ経済活動のハブ、東北アジアの人々の人的交流の中心として、平和の楽園となって然るべき沖縄は、「子供の貧困率」、「若年者職員・従業員のうち非正規の職員・従業員の割合」は群を抜いて全国トップの県に成り下がってしまっています。(『住民と自治』2016年5月号によれば、2012年のデータで、「子供の貧困率」は全国平均が13.8%に対し沖縄は37.5%、「若年者職員・従業員のうち非正規の職員・従業員の割合」は全国平均が35.3%に対し沖縄は50.4%と全国平均から大きく乖離し、全国トップです。)

  沖縄は、その歴史的経緯から、天皇と日本国と米国に貸した、物的、肉体的、精神的な貸しを、熨斗を付けて返してもらわなければならない。本来なら、天皇と日本国と米国に同じ苦しみを味わってもらわなければならない。そのうえで、基地のない平和な島を、基地によって失われた経済的利益とともに返してもらわなければならない。沖縄はそのことを日本政府に要求する権利をもっています。沖縄は、沖縄のもつ地理的優位性を「軍事」にではなく、人と物の交流のために生かし、豊かな生活を享受する権利を持っています。それらの第一歩として、「DV野郎」から自立するための諸施策を要求する権利を沖縄県民はもっており、〝オール沖縄〟とはその権利を自覚したすべての沖縄県民の総称です。〝オール沖縄〟とは、単なる数の概念などではありません。だから、自信をもって、基地撤去の運動とともに豊かな沖縄をつくる権利を運動にしっかりと位置づけて、〝オール沖縄〟の運動を10倍も100倍も強めなければなりません。私は2016年1月に沖縄を訪問したとき、そのことを強く感じました。

不破さんの「講演」の内容

 しかし、不破さんの「講演」は、基地の実態と団結の重要性、安保条約は通告すれば廃棄できるという、一般に沖縄に住んでいる人ならたいがいの人が知っている程度のもので、実にお粗末なものでした。不破さんの「講演」で言われている程度のことは十分理解しながら、宜野湾市長選で「シムラ」さんに投票しなかった人たちの苦悩への理解が、不破さんの「講演」には、残念ながら、まったく欠けています。五中総が日本経済の〝根本〟問題を欠いてるように、不破さんの「基地のない平和な沖縄への展望」には〝豊かな沖縄〟の〝展望〟がまったく欠けていました。
 安保条約に基づいて通告すれば条約は破棄できる、これが伝家の宝刀だ、ではあまりにもお粗末です。

2016年の参院選で当選したイハさん

 2016年の参院選の沖縄選挙区は、イハさんが圧倒的な強さで自民党現職を破って当選しました。イハさんが当選の挨拶で、議員としての抱負として、米占領下とその後の沖縄のおかれた状況のもとで、遅れてしまったものの解決を政府に訴える旨を話していたのをテレビで見ました。私は、今回の選挙で沖縄を訪問していないので、確かなことは残念ながらわかりません。しかし、あのテレビでの挨拶といい、イハさんのホームページに示された政策といい、イハさんには、沖縄の現実をリアルに見る目と、明日の沖縄の明確なビジョンを示す構想力とがあることがわかります。

『赤旗』は、「展望」のない不破さんの「講演」のパンフの宣伝をやめるべきだ

 これにひきかえ、不破さんの講演は、「日本の国民の手には切り札がある」として、安保条約は通告すれば廃棄できるというもので、沖縄の地の利を生かした、人と物の交流を中心とした〝豊かな沖縄〟づくりと「基地のない平和な沖縄」づくりとを一体不可分なものとして〝オール沖縄〟の力で実現していく「展望」を示し、沖縄の人々の生活に根ざした苦悩を解消し、沖縄県民一人ひとりのエネルギーを沸き立たせるものではありませんでした。不破さんの「基地のない平和な沖縄への展望」には〝豊かな沖縄〟への〝展望〟がまったく欠けていました。
 このような視野の狭い「講演」のパンフの『赤旗』での宣伝はやめるべきです。こんなパンフレットは、決して、有能な共産党員を育てません。沖縄問題の解決は、「けっして『ウラー』をさけんで解決する」(レーニン全集第27巻P84-85)ことをゆるす課題ではありませんから。
 なお、前出のHP3-2-6「〝前衛党〟は市民革命の助産婦に徹しよう」と3-2-8「参院選の教訓──前衛党が学ぶべきものを中心として」も、是非、お読み下さい。