2-1-8

「資本主義的生産様式の社会」に変わる〝新しい生産様式の社会〟とは

──〝新しい生産様式の社会〟は主権者である国民・労働者階級が創る──

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「資本主義的生産様式の社会」に変わる〝新しい生産様式の社会〟とは

このページの目的

このページの目的は、〝資本主義的生産様式の社会〟の推進力とその限界を明らかにし、それに変わる〝新しい生産様式の社会〟とはどのような社会なのかを示し、そのために何が必要なのかをみなさんと一緒に考えることで、このページをご覧いただいたみなさんが日本の明日を考えるためのなにがしかのヒントを得ることができ、高望みかもしれませんが、願わくば、日本に〝新しい生産様式の社会〟を一日も早く実現するために、みなさんが尽力されるようになっていただくことです。

〝資本主義的生産様式の社会〟の限界と〝新しい生産様式の社会〟

 

〝資本主義的生産様式の社会〟の推進力とその限界

〝資本主義的生産様式の社会〟は、「資本」が生産と社会を支配し、「資本」が大きくなることによって経済が発展するという特徴・法則をもつシステムの社会ですが、〝新しい生産様式の社会〟は「資本」による生産と社会の支配を認めず、人間が生産と社会をコントロールするシステムの社会です。

 資本主義社会の「推進力」は──社会の〝真の推進力〟は、資本主義的生産様式のもとで隠蔽され、搾取されている労働者階級の生産そのものですが──、資本主義的生産様式のもとで神聖不可侵な力を与えられている「資本」にあります。

 この、個人がお金儲けをすることによって経済が大きくなり、そのことによって社会が支えられるという資本主義的生産様式の社会の特徴は、同時に、資本主義的生産様式の社会は生産力の自然的な伸びしろとは無関係に「資本」の都合によって生産力が制限されるという特徴・限界を含んでいます。

〝資本主義的生産様式の社会〟の致命的な欠陥は、「資本」という社会発展の「推進力」が、同時に、社会発展の「足かせ」でもあるという点にあります。

 

 〝新しい生産様式の社会〟とは

この「資本主義的生産様式の社会」を乗り越えた〝新しい生産様式の社会〟は、資本主義的生産様式の社会の推進力であり、同時に、社会発展の「足かせ」でもある「資本」の支配力を制度的に取り除いた社会で、「経済は資本のためにある」という社会から〝経済は社会のため、国民のためにある〟という社会に革命的に転化した社会です。

 それは、マルクスの言う〝結合労働の生産様式〟の社会です。その〝社会の発展の推進力〟は、企業と国家の運営に全面的に参画した労働者階級と国民の結合した力、つまり、〝人間の社会にたいする支配力〟です。〝新しい生産様式の社会〟を発展させる推進力は、国民の生活を豊かにするための真の社会的生産であり、社会を発展させるための自覚的な個人に目ざめた、名実ともに社会の主人公となった国民一人ひとりの〝結合した力〟です。

〝新しい生産様式の社会〟への道

 

企業は誰のもの──「ダボス会議」の憂鬱──

「持続可能で団結力ある世界を築くためのステークホルダー間連携」というテーマで開催された2020年のダボス会議について、『日経』新聞によれば、「21日開幕した世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)は、資本主義の再定義が主題になった。株主への利益を最優先する従来のやり方は、格差の拡大や環境問題という副作用を生んだ。そんな問題意識から、経営者に従業員や社会、環境にも配慮した『ステークホルダー(利害関係者)資本主義』を求める声が高まる。中国主導の『国家資本主義』に抗する新たな軸への模索が始まった。……今回の会議は『株主至上主義』の見直しをグローバルな場で再確認する機会になった」(2020/01/23)という。加えて、「我々の知っている資本主義は死んだ」という声さえ出たといいます。(*)

 そして、2020年6月4日の『日経』によれば、「2021年1月に開催する年次総会(ダボス会議)のテーマを「グレート・リセット」にすると発表した」とのこと。その理由として、クラウス・シュワブ会長の「世界の社会経済システムを考え直さないといけない。第2次世界大戦から続く古いシステムは異なる立場のひとを包み込めず、環境破壊を引き起こしてもいる。持続性に乏しく、もはや時代遅れとなった。人々の幸福を中心とした経済を考え直すべきだ」「次の世代への責任を重視した社会を模索し、弱者を支える世界を作っていく必要がある。」と言い、「自由市場を基盤にしつつも、社会サービスを充実させた『社会的市場経済(Social market economy)』が必要になる。政府にもESG(環境・社会・企業統治)の重視が求められている」と言う言葉を載せられています。

 シュワブ会長の言う「社会的市場経済(Social market economy)」なるものが「国家資本主義」の中国の社会主義市場経済(socialist market economy)に「抗する新たな軸への模索」なのかどうかは分からないが、資本主義のオピニオンリーダー達も「企業」が〝社会〟を意識せざるを得なくなってきていることを深刻に捉えていることだけは確かなようです。

 2021年のダボス会議が、金儲けという私利私欲だけの手段を使って歪んだ形で社会を発展させるという私的資本主義的所有・取得に基づく奇形的な「社会的生産」──「資本主義的生産様式の社会」の欠陥──をそのままにして、「株主」をスケープゴートにして「社会的市場経済」を語り合うとしたら、「ダボス会議」の憂鬱は、まだまだ、当分続くことになるでしょう。

(*)断片的ですが、中国の評価については、ホームページ6-3-4「相異なる二つの「国家資本主義」大国とグローバル資本と世界の人民の国際連帯」及びホームページ3-3-2「『2020年綱領』を克服して、共産党よ元気をとりもどせ!!」を参照して下さい。

 

企業は社会のもの国民のもの

私は「〝新しい生産様式の社会〟とは」で、〝新しい生産様式の社会〟は資本主義的生産様式の社会の推進力である「資本」の支配力を制度的に取り除いた社会で、「経済は資本のためにある」という社会から〝経済は社会のため、国民のためにある〟という社会に革命的に転化した社会であることを述べました。

 経済が社会のため、国民のためにあるためには、企業が「資本」のためにあるのではなく〝社会〟のため〝国民〟のためにあり、〝企業は社会のもの国民のもの〟でなければなりません。

 

〝新しい生産様式の社会〟の特徴

〝新しい生産様式の社会〟は、労働者階級を中心とする国民が獲得した政治権力によって、資本主義的生産様式の社会の推進力である「資本」の支配力を制度的にそぎ落とさなければなりません。社会を「経済は資本のためにある」という社会から〝経済は社会のため、国民のためにある〟という社会に革命的に転化するためには、「資本」という私的財産権に認められている「企業を支配する権利」を消滅させなければなりません。

 しかしそれだけでは〝新しい生産様式の社会〟はつくれません。企業を社会のための〝器官〟として機能させるためには、「資本」の支配力を制度的にそぎ落とすだけでは駄目です。社会による企業の統治が行なわれなければなりません。〝新しい生産様式の社会〟は〝結合労働の生産様式〟の社会です。だから、労働者階級を中心とする国民が〝結合労働〟の組織者として政治権力を獲得するとともに、〝結合労働〟者として「企業」を統治する仕組みと能力を保持しなければならないのです。

「国家資本主義」の中国は、国家に対する「資本」の支配力を「中国共産党」の支配力に置き換えた国家体制の国ですが、〝新しい生産様式の社会〟は国民による国家の統治と社会による企業の統治が行なわれる社会で、中国の国家体制とはまったく異なります。

 

〝新しい生産様式の社会〟への道

それでは、企業と国家の運営に労働者階級を中心とした国民が全面的に参画した社会はどのように実現されるのでしょうか。

 そのためには、まず、社会による企業の統治の正当性と必要性を国民一人ひとりが正しく認識しなければなりません。だから、そのために、「資本」の支配力をそぎ落とす制度の必要性と社会による企業統治の正当性を明らかにする粘り強い努力が必要になります。

 社会による企業統治は、議会を通じて政治的に「資本」の支配力を制度的にそぎ落とすだけで実現するものではありません。社会による企業統治は、新しいモデルのない挑戦です。先ほど「ステークホルダー(利害関係者)資本主義」なるものに言及しましたが、「ステークホルダー資本主義」なるものが「企業」に労働者、地域社会が積極的な関与を行なうことができるような制度にまで踏み込むことができれば、それは〝新たな社会の構成要素〟に転化し、〝社会による企業統治〟への道を探る方法の一つとなります。

私たちは、労働者、地域社会の積極的な関与による〝社会による企業統治〟のための〝新たな社会の構成要素〟の芽を見つけたら、〝社会による企業統治〟の必要性と正当性を強く訴え、見逃すことなく育てる努力を怠ってはなりません。

 

労働者がつくる〝社会による企業統治〟の萌芽

労働者がつくる「社会による企業統治」の萌芽の、初歩的な、その兆候のような一つの例として、自治体労働者がおこなう「自治研」活動いう運動があります。この運動は、自治体労働者が〝労働者・国民〟の立場で、自らの仕事に関係のある住民等と話し合い、かれらと認識を共有して、住民本位の自治体行政を進めるための糧・エネルギーとしようとする運動で、1970年代に燎原の火のように拡まった革新自治体の発展とともに発展し、革新自治体の衰退とともに、残念ながら、大きなムーブメントではなくなってしまいました。自治体労働者が自らのアイデンティティを作るためにも、未来の労働のあり方を探究するためにも、再び「自治研」活動が全国で活発に行なわれることを願ってやみません。

 これらの教訓も生かし、官民を問わず、労働組合を中心に、資本の支配を維持するための「ステークホルダー資本主義」を乗り越える「社会による企業統治」のあり方を模索し、提言し、社会的合意を形成していくために、労働者階級は、目からウロコを取り除いて、努力する必要があります。職場の労働者には、不破さんの言う職場という「オーケストラ」(チームワーク)の働き手の一員という意識から、「オーケストラ」(企業)のオーナーの一員への脱皮を意識する労働者となることを、強く、期待します。そのとき、〝社会による企業統治〟の第一歩が始まります。

このページをご覧いただいたみなさんは、是非、このページをヒントとして労働者が職場の主人公となるような職場づくりをめざし、日本の未来のために躍動してください。

編集後記

これらのページ群をお読み頂いて、「資本主義的生産様式の社会」が〝新しい生産様式の社会〟に変わる合理的な理由を納得され、その変革は、単なる「政治」の問題などではなく、社会の仕組みそのものの変革であり、それ故に国民の総意と総参加なくして実現できないことを、みなさんと共有することができれば、これ以上の喜びはありません。