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相異なる二つの「国家資本主義」大国グローバル資本世界の人民の国際連帯

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6A-3-4相異なる二つの「国家資本主義」大国とグローバル資本と世界の人民の国際
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はじめに

 米国と中国という相異なる二つの「国家資本主義」大国の対立の根底にあるグローバル資本の飽くなき利益追求の強化によって、世界はグローバル資本による不当な収奪の枷で、強く、締め付けられようとしています。

 「不当な収奪の枷」が〝古い社会の変革契機〟として世界の人民の国際連帯を呼び起こし、グローバル資本の世界支配を打ち砕くことを願って、このページ〝相異なる二つの「国家資本主義」大国とグローバル資本と世界の人民の国際連帯〟を開設いたしました。

 まず、はじめに、米国の世界戦略とそれを動かすグローバル資本の意図を見てみましょう。

 

グローバル資本を支える米国の世界戦略について

 1970年代以降、資本主義的生産様式に基づく発展の伸びしろがますます小さくなる先進資本主義諸国と資本主義的発展の大きな伸びしろをもった新興諸国という「世界市場」の新しい環境が生み出されると、不断の拡大が義務づけられ、「利潤率の傾向的低下の法則」との不断のたたかいを強いられている〝資本〟は、先進資本主義諸国から低賃金で搾取率の高い新興諸国へのグローバル展開への道を、「新自由主義思想」とともに、本格的に歩み始めます。

 グローバル資本は「母国」の産業を空洞化することによって、一面では、自らを育てた出身国の国民を棄てているにもかかわらず、グローバル資本にとって新興諸国はあくまでも低賃金で労働者を搾取するための「場」にしか過ぎませんから、技術が遅れた国々での技術の先行者利得を固定化して収奪を続けるためにも、そして、自らを守るためにも、国民を棄てた出身国等の先進資本主義国に頼らざるをえません。

 産業を空洞化させ、国民を棄てても、国の支配階級として君臨するグローバル資本は、米国を盟主として日米欧の先進資本主義諸国を協調させ、自分たちに有利な経済ルール(不当な収奪の枷)を世界に押しつけることを求め続けてきました。

 米国は、かつて、世界第2位のGDPの日本の勢いを削ぐために激しいジャパンバッシングを行ないましたが、今は、米国に本拠を置き情報技術を活用して大儲けをしているグローバル企業の利益を擁護するため、タックスヘイブンの制度の利用を含むこれらのグローバル企業にとって有利な「経済ルール」を日・欧の先進資本主義諸国を含む世界中の国々に押しつけるなど、これまで、終始一貫して「アメリカファースト」を貫き通してきました。

 「産業の空洞化」の被害者である白人労働者層の支持をうけて2017年1月20日登場した米国トランプ政権は、「産業の空洞化」を推進してきた米国企業には目をつむり、「国家資本主義」を剥き出しにして、公然と「アメリカファースト」を掲げ、①貿易の不均衡の解消による雇用増での「白人労働者層の支持」の維持、②先進資本主義諸国に対する米国へのより多くの経済的利益の要求、そして、③米国の経済優位を脅かしかねない中国の技術開発の抑制と「グローバル資本に有利な経済ルール」の再構築による新興諸国の自立化の押さえ込みと低賃金での労働者の搾取の永続化をめざし、世界に圧力をかけ続けてています。

 これが、今日の「貿易と世界市場」についての、公然と「アメリカファースト」を唱えて世界に君臨し続けようとする米国と現代のグローバル資本とそれを支える諸国家の最新の動向です。

 私たちは、この米国トランプ政権とグローバル資本と先進資本主義諸国の狙いをしっかりと理解しなければなりません。

 

米国の国際社会への貢献の道

 米国はグローバル資本と一体になって、これまで見てきたように、〝国際社会への貢献〟とは真逆なことを行なうことがノーマルな、私的財産権が国家と国民を蹂躙することがノーマルな、私的財産権の立場から経済と世界を見る転倒した認識がノーマルな国です。

 もちろん、日本も似たり寄ったりですが、こういう国の国民が自己否定して国際社会への貢献の道を歩むのは大変な努力が必要です。しかも、国民の合意のもとで、「資本」という私的財産権が「企業」を支配する〝資本主義的生産様式の社会〟を覆そうとすると激烈な抵抗、激烈な階級闘争が予想されます。

 

中国という国とその世界戦略について

 中国は中国共産党という政治集団が国家権力を握り、資本主義的生産様式──資本による「搾取」と「企業経営」──の基で、中国共産党の政府が「国家資本主義」を強力に押し進めるという政治・経済体制の国家で、資本家階級の政党が支配するいわゆる「西側諸国」とは異なりますが、「資本」の力を排除した、国民が「企業」を民主的に運営する社会主義の国家とも異なります。

 中国は「アメリカファースト」のアメリカ帝国主義に対抗して、「中国ファースト」の色濃い対外膨張政策を取って近隣諸国の警戒感を高めています。中国の政治・経済の向かう方向が、「帝国主義」の打破ではなく覇権争いの勝利であるならば、中国も「アメリカ帝国主義」同様の害悪を世界に与えることになります。

 

中国の国際社会への貢献の道

 中国は中国共産党という政治集団が国家権力を握った「国家資本主義」の国ですが、米国のように私的財産権が国家と国民を蹂躙する体制が整った国ではありません。だから、国民の自治意識と政治の透明性が高まり、国家権力が国民全体のものとなって、企業を含む社会のあらゆる構成要素に国民の声が反映されるようになれば、米国よりも容易に〝新しい生産様式の社会〟への道を歩むことが出来る可能性があります。

 

相異なる二つの「国家資本主義」大国に対し世界の人民がなすべきこと

 このような相異なる二つの「国家資本主義」大国の覇権争は、世界の人民の闘いがなければ、グローバル資本による世界の人民の搾取と収奪を一層強化するための体制固めの機会になるだけです。

  相異なる二つの「国家資本主義」大国の覇権争いのなかで、世界の人民がなすべきことは、グローバル資本の持つ知的財産権を搾取の道具にさせないために、そして、グローバル資本が労働者から搾り取った利益の逃避を許さないために、米国を盟主とする日米欧の先進資本主義諸国が、談合して、グローバル資本に有利に作った経済ルール(不当な収奪の枷)に対して連帯して反対し、グローバル資本が押しつける不当な低賃金を是正させ、グローバル資本にはその国での社会的責任を果たさせることです。

 そして、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界中に蔓延し始めたいま、個々の企業が儲けを拡大することによって社会を動かすという資本主義的生産様式のシステムはその欠陥が益々明らかになり、システム崩壊の危機の前夜にあり、先進資本主義諸国もなんらかの社会主義的な政策をとらざるを得なくなっています。

 相異なる二つの「国家資本主義」大国の覇権争いが激化し、世界が混迷を深めれば深めるほど、資本が社会を支配するのではなく、社会が資本の力を削り取って社会(国民)が経済を支配する社会を作るために、世界の人々が連帯して闘うことが、強く、求められます。私たちは、いま、その「時」に際会しています。

※このページと合わせて、是非、ホームページ6-2-22「トランプ大統領が仕掛けた貿易戦争と科学的社会主義の思想──「資本」同士の世界貿易戦争と科学的社会主義──」もお読み下さい。なお、国際社会との向き合い方についての私の基本的な考え方については、ホームページ2-5「2パラダイムシフト」→「2-5 国際社会とどう向き合うか」を参照して下さい。また、世界の資本主義のリーダー達の「COVID-19」にたいする態度を知るためにも、ホームページ6-2-6「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が示した資本主義的生産様式の社会の欠陥」もお読み下さい。

 

おまけ 

  4年に一度の米国大統領選挙も近づいています。どのような展開になるのか、日本のマスコミはどのように報じるのか、今年の米国大統領選を見る参考のために、4年前に公開したホームページ6-2-20「第1回大統領候補テレビ討論中継でCNNが伝えたことと、日本のマスコミが報道したこと」を、是非、お読み下さい。