1-3

今の日本の経済を動かす力

資本主義の法則

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今の日本の経済を動かす力

 

資本主義的生産様式の社会の生産のしくみ

日本は資本主義社会です。だから、〝今の日本の経済を動かす力〟は〝資本〟の存立・拡大を実現するための条件によって決定されます。だから、まず始めに、〝今の日本の経済を動かす力〟を知るために、極々大雑把に、このページのテーマに沿う限りで、「資本主義的生産様式の社会」と「資本と資本主義社会の法則」とを見ていきましょう。

 私たちが見ている、資本主義社会の基本となる生産のしくみは、お金を持った資本家が儲かると思う商品を作るために生産設備や原材料を買い、労働者を雇って(労働力を買って)商品を作り、原材料に付加価値を付けて売ることによって、資本家がかかった経費とともに儲けを着服することができる、というシステムです。

 この、資本主義的生産様式の社会は、〝資本〟という「財産」の持ち主が〝資本〟を大きくするために企業の経営権と儲けを独占する権利をもつことによって成り立っている社会ですから、資本家は儲かる限りでのみ投資をおこない、〝資本〟は──大海原で泳ぎ続けなければ死んでしまうマグロのように──生産を拡大し続け、儲けを増やし続ける限りでのみ、資本主義社会での存在意義があります。

 資本主義的生産様式の社会は、このように、生産を拡大し続けなければならず、しかも、生産が社会的におこなわれいるにもかかわらず企業の経営権と儲けは私的に独占されている──エンゲルスは、これを、〝生産の社会的性格と取得の資本主義的形態との矛盾〟といいました──ため、資本主義的な生産のための条件が失われた時には、社会は大きなダメージを受けることになります。

 このことをしっかり頭に入れて、「2015年8月からタイムマシンに乗って、日本を遡る」で見たものの意味を、しっかり、確認していきましょう。

 なお、余談ですが、資本主義的生産様式の社会は、加えて、儲けるためには労働者の賃金を値切らなければならず、企業が得る〝富〟は、そのために、表で握手をして裏でパンチを食らわせあうような、裏取引と表裏一体の激烈な競争を経て、他社を打ち負かすことを通じて実現されます。だから、それに関わる人たちの人間性も悪くなります。

 

「2015年8月からタイムマシンに乗って、日本を遡る」で見たものの意味

それでは、「2015年8月からタイムマシンに乗って、日本を遡る」で見たものの意味を確認しましょう。

 資本主義的生産によって作られる日用品が圧倒的に不足している間は、景気の波をかぶりながらも、生産は拡大し、社会の富が増大し、国民生活も豊かになります。しかし、商品が社会の必要量を充たすようになると、これまでのような生産をどんどん拡大して社会の富を増やし、国民生活をも豊かにするという、資本主義的な生産方法は限界にぶち当たります。

 そのとき、事業拡大の余地のなくなった資本は、それでも儲け続けるためにどんな行動をとるのか。方法は二つあります。

 一つは、需要の範囲内での生産で儲けを増やし続けようとすること。設備投資の必要のなくなった資金を銀行に返し──これが、前のページの〈儲けた金は国内での投資ではなく、借金返済へ〉で見たことです──、内部留保を厚くし、必要最小限の設備更新をして生産性を高め、労働者の数を減らし、あれこれ理屈を付けて賃金を引き下げる。これが毎年続くと、社会の富の生産が減り続け、社会は停滞する。もう一つは、作った製品を海外で売りさばくことで儲けを増やすことです。輸出超過が永遠に続くならば問題は解決する。しかし、それは無理です。そこで、貪欲な資本は、国民が創った富と雇用を海外に持ちだし、安い賃金で海外で生産して、一層の儲けをえようとする。その結果、国内産業が空洞化し、価値を生む製造業の労働者が減少し生産性の低い労働集約型のサービスに携わる労働者の数が増加して、労資関係が資本優位になり、あからさまに資本主義を追求する新自由主義が社会を覆う。

 いずれも、国民にとって未来のない道である。今の日本経済はこの二つの道を歩んできた。その結果、「2015年8月からタイムマシンに乗って、日本を遡る」で見たような現実が起きたのです。

 

ミネルバの梟が飛び立つても、見ようともしない「前衛党」

資本主義国に生まれながら、「好景気」ならば本来上がるはずの給料も上がらず、生涯現役を強いられ、日本社会が没落していくのを定められたことのように感じている若者たちは、この社会のどこに、自らの希望と拠りどころを見つければよいのか。財界と自民党が一体となって、このような社会をつくった。なのに、若者の支持が最も高いのが自民党だという。

 ミネルバの梟は黄昏どきに飛び立つといいます。

 マルクスは、1865年2月18日付けのエンゲルスへの手紙で、プロイセン政府の幻想のバラ撒きにたいして、「労働者党の誇りは、このような妄想の空虚さが経験によってはじけるより前に、そのような妄想を退ける、ということを要求しています。労働者階級は革命的なのであり、そうでなければそれはなにものでもないのです。」と述べて、科学的社会主義の党=〝前衛党〟の誇りは、ミネルバの梟が飛び立つ黄昏どきが来る前に未来を示せることであることを述べています。

 これまで見てきたように、1995年には、すでに、資本が海外に富と雇用を持ち出すことによる労働者と国民の生活及び社会保障制度全般への深刻な影響が顕在化し、日本の「産業の空洞化」の弊害が誰の目にも明らかになりました。そして、2016年の米国大統領選では、「産業の空洞化」への取り組みを前面に打ち出したトランプ氏が、日本の自民党同様の言葉だけの成長戦略を訴えたクリントン氏に勝利しました。*

 しかし、ミネルバの梟が飛び立つて久しくなっても、不破さんによって骨抜きにされてしまった「前衛党」の党首(志位委員長)は、BS日テレの深層NEWSで「なぜ空洞化するのかというと、日本の国内の需要が冷えているからですよ。だから外に出て行っちゃう。」などと、財界と自民党の人たちが聞いたら泣いて喜ぶような「空洞化」の理由をのべて、国民を真実から遠ざけます。

これでは、没落していく日本社会のなかに自らの希望と拠りどころを見つけることのできない若者たちが、自民党を支持するのも無理はない。

*詳しくは、ホームページ6-3-1「第1回大統領候補テレビ討論中継でCNNが伝えたことと、日本のマスコミが報道したこと」等を、是非、参照して下さい。

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