NEW!! 2024/02/01

IMFが示した無情

 

IMFが示した無情

〝賃金と物価の好循環〟“はかない夢”か?!

2024年1月30日、国際通貨基金(IMF)は四半期ごとにおこなう世界の経済見通しを公表し、今年の日本のGDPを昨年10月の見通しより0.1ポイント低い0.9%の成長と見込み、2025年はさらに低い0.8%としました。

 IMFのこの見通しは、2023年12月21日政府が持ち回り閣議で、2024年度の予算案の前提として示した、プラス1.3%程度の経済成長率との乖離を益々広げています。

そして、恥ずかしいことに、この2025年の見通しは、あたかも停滞した経済の象徴のように揶揄され続けているイタリアや米国を中心とする搾取先進緒国から厳しい経済制裁を受けているロシアの 1.1%よりも低い。

IMFがこのような低い見通しを出すということは、企業が日本国内での設備投資を十分におこなわず、その結果、経済停滞が続き、政府と財界とマスコミが囃し立てている〝賃金と物価の好循環〟がはかない夢におわるだろうという見通しをIMFがもっているということです。

このことは、マルクスのいう〝健全で「単純な」(!)常識の騎士たち〟を絵に書いたような、「賃金が上がれば経済は発展する」という分配だけしか問題にしない現在の「共産党」のエセ「科学的社会主義者」としての誤りも、また、明らかにしています。

米国のような覇権国ならば、外国の企業をアメとムチによって自国に投資させることによって、「産業の空洞化」を克服して、ぶ厚い中間層の復活を実現することも可能かもしれません。しかし、日本にはそんな力はありません。だから、日本が「産業の空洞化」を克服して「一億総中流社会」を復活させる道は、科学的社会主義の常道に従って、日本の私的資本を社会に従わせること、つまり、労働生産性の高い企業の富と雇用を国内に回帰させる以外に、〝賃金と物価の好循環〟など起こり得ません。

2024年1月30日公表のIMF報告は、そのことを示しているのです。

NEW!! 2023/11/19

これでいいのか、〝日本の報道〟

 

習近平氏の2023年11月15日の演説

2023年11月15日、習近平氏はバイデン氏との会談のあと、テスラのマスク氏、アップルのクック氏、そして、ナイキのパーカー氏などを含む米国の各界の人々が一堂に会した米国の米中友好団体が主催するレセプションに出席し、概ね次のような内容(要旨)の演説をおこないました。

 米中の友好関係の発展は両国の人民(日本語に訳すと国民か?)が作ってきたこと、そしてこれからも両国の人民が両国の友好関係を発展させていくこと、中国は米中両国が共に繁栄することを願っていることを述べ、その中には、未来への希望を表す共産主義者のお気に入りの言葉──“未来は青年のもの”──という言葉もちりばめられていました。

 

この演説の映像を使い、BSフジのプライムニュースが報じたこと

上記の演説について、16日のBSフジのプライムニュースで、上記の演説の映像を使い、この番組を仕切っている反町氏は、友好団体のレセプションでの習近平氏の演説を「記者会見」と偽り、〝今まで会談後に記者会見をしたことのない習近平が記者会見をした〟と習近平氏の演説を〝異例の記者会見〟にみせ、「異例の記者会見」の理由を──演説内容など伝えることなく──〝経済困難に堕ちいている中国の窮状にもとづく習近平氏の行動〟のように報じました。

 この「ニュース」の中にある“事実”は「習近平氏の演説の映像」だけです。「習近平氏の演説の映像」が反町氏の日本国民への印象操作の材料として一役買わされていますが、レセプションの内容は一つも出てきません。〝日本の報道〟は、これでいいのでしょうか。そら恐ろしい気がします。

 

BSフジのプライムニュースの名誉のためにひと言

なお、このような不名誉極まりない「BSフジのプライムニュース」の名誉のためにひと言申し上げると、「BSフジのプライムニュース」は、「BS日テレの深層NEWS」は言うに及ばず、「BS-TBSの報道1930」よりもずっと多く出演者が、事実を──ウソも混じえて、米国や日本政府の意向を伝え、米国や日本政府をサポートするだけの歪んだ太鼓持的な主張の材料として使うのではなく──“事実”として伝えたり、相手の主張を自分の主張に合うように邪推するのではなく相手の立場に立って話したりする、そういう人たちで占められていることだけは申し添えておきます。五十歩百歩と言ってしまえばそれまでですが。

2023/06/03

「G7首脳」の〝厚顔無恥〟な「宣言」に騙されないために〉

米国のポチがまとめたG7首脳のペテン的な文章

〝濁清〟混合の「G7首脳宣言」の読み方

 

中国を〝当て馬〟に「先端的・戦略的技術・物資」の独占を試みる「G7」

Bloomberg(2023/05/21)によると、対中関係について、G7首脳は「デカップリングや内向きへの転換ではない」と強調し、デカップリングではなく「デリスキング(リスク軽減)」の概念に基づく経済安全保障へのアプローチで協調する意向も確認し、経済的威圧に対抗し「国家安全保障を脅かすことに使われ得る特定の先端技術を保護」しながら、「われわれの労働者と企業にとって公平な条件を求める」とし、「成長する中国が国際ルールに従うことが世界の利益になる」としたという。(※『』内がBloombergの記事)

「G7首脳宣言」は対中関係を「経済的威圧」に対抗する「経済安全保障」の問題として描いているが、次に見るように「経済的威圧」をかけたのはトランプ米大統領であることを、まずはじめに確認して、この「G7首脳宣言」が「G7」を何処に向かわせようとしているのか明らかにするために、「G7」の覇者である米国の世界戦略を見てみましょう。

米国のトランプ大統領は公然と「アメリカファースト」を掲げ、①貿易の不均衡の解消による雇用増による「白人労働者層の支持」の維持、②先進資本主義諸国に対する米国へのより多くの経済的利益の要求、そして、③米国の経済優位を脅かしかねない中国の技術開発の抑制と「グローバル資本に有利な経済ルール」の再構築による新興諸国の自立化の押さえ込み及び低賃金での労働者の搾取の永続化をめざし、EUを含め、世界を震え上がらせました。

 中国との経済覇権争いにおいて、トランプ米大統領は、①貿易赤字の解消、そのための高率関税の賦課②技術移転の拒否③先端的・戦略的技術への国家の支援の抑制による「アメリカファースト」の実現の三点セットの要求──「G7」流にいうと「経済的威圧」──を行い、①と②においては、中国の歩み寄りにより一定の成果を上げることに成功しました。しかし、「先端的・戦略的技術」という〝中国との経済覇権争い〟の本丸でのたたかいにおいて、また、先進資本主義諸国に対する米国へのより多くの経済的利益の要求においては、トランプ大統領は、思うような成果を上げることができませんでした。

 そこで、米国の経済的・軍事的覇権を維持し、先進資本主義諸国を米国の経済的・軍事的覇権のもとに置くためのキーとなる政策として、トランプ政権の政策を引き継いだバイデン民主党政権が全面に打ち出したのが、「国家安全保障を脅かすことに使われ得る特定の先端技術」の囲い込みと中国の「先端的・戦略的技術・物資」の排除という中国との「デカップリング」戦略です。

※これらについてのより詳しい説明は、ホームページ6-3-3「トランプ大統領が仕掛けた貿易戦争と科学的社会主義の思想…「資本」同士の世界貿易戦争と科学的社会主義」及びホームページ6-3-4「相異なる二つの『国家資本主義』大国とグローバル資本と世界の人民の国際連帯」を、是非、お読み下さい。

だから、米国の世界戦略に従う「G7首脳」の「宣言」は、「国家安全保障を脅かすことに使われ得る特定の先端技術を保護」すること、つまり、「先端的・戦略的技術」の「デカップリング」を隠していません。そして、その上で、「デカップリング」を、米・中間の因果関係を逆さまにして、中国の「経済的威圧」に対する「経済安全保障へのアプローチ」としての「デリスキング」だなどと偽り、「成長する中国が国際ルールに従うことが世界の利益になる」と述べて、「先端的・戦略的技術」を持たない、買いたたくことのできる中国に逆もどりさせることによって、中国から「G7」の利益を追求し続けようとします。

「G7首脳」は、「われわれの労働者と企業にとって公平な条件を求める」といい、「成長する中国が国際ルールに従うことが世界の利益になる」といいます。しかし、グローバルサウスと言われる国々は〝誰が「国際ルール」と称してグローバルサウスの「労働者と企業にとって公平な条件」を奪い、誰がグローバルサウスを搾取し続けてきたのか〟を十分理解しています。

世界の人々を搾取し続けてきた「G7首脳」が、「デカップリング」を「デリスキング」と言いくるめ、「先端的・戦略的技術・物資」を米国中心に囲い込み、「G7」の利益となる「国際ルール」を国際貿易の前提とする〝濁〟を憚ることなく主張しながら、それを覆い隠すために「労働者と企業にとって公平な条件」という〝清〟の言葉を振りまいても、日本国民の一部を騙すことはできても世界を騙すことはできないでしょう。

※国際社会との正しい向き合い方については、是非、ホームページ2-4「国際社会とどう向き合うか」を参照して下さい。

 

「核抑止力」の正当性を主張して〝広島〟市民の心に塩を塗る「G7」

ペテンを旨とする「G7」首脳の同様な〝濁清〟混合の作文は、核問題でも言えます。

「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」は核兵器について、「我々は、全ての者にとっての安全が損なわれない形で、現実的で、実践的な、責任あるアプローチを通じて達成される、核兵器のない世界という究極の目標に向けた我々のコミットメントを再確認する」と述べて、「核抑止力」の正当性を主張し、その正反対の「核兵器のない世界」を「究極の目標」としています。

まず第一に、「全ての者にとっての安全が損なわれない形で」というのは真っ赤なウソです。「G7」は、自分たちの「安全が損なわれない」ように「核」で脅し、「核」で脅されている国が「核」を持とうとすると「制裁」して、自らの安全を図り、「全ての者にとっての安全」などまったく考えていません。このような「G7」にとって有利で「安全」な状況が「損なわれない」ためには、「核兵器のない世界」をめざすのではなく、〝核兵器の拡充〟による「核抑止力」の強化以外にありません。

「核抑止力」に頼るということは、〝核の拡散〟と〝核兵器の拡充〟への道を歩むということと同義語です。「核抑止力」の考えを捨てる以外に「核兵器のない世界」を実現する道はありません。「核抑止力」の考えに基づく「究極の目標」は「圧倒的な核兵器の優位」の揺るぎない確保であって、どんな「アプローチを通じて」も「核兵器のない世界」が「達成される」道などありません。〝濁〟から〝清〟は、けっして、生まれません。

だから、「核抑止力」の正当性を主張することは、自らの悲惨な経験から〝核兵器のない世界〟を真剣に希求する〝広島〟市民の心に塩を塗ることです。私たちは、「核抑止力」論の持つ意味を、しっかり頭に刻み込んでおきましょう。

 

われ亡きあとに洪水はきたれ!

また、「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」は原子力発電について、「原子力発電又は関連する平和的な原子力応用を選択するG7の国は、原子力エネルギー、原子力科学及び原子力技術の利用が、低廉な低炭素のエネルギーを供給することに貢献することを認識する」と述べ、「原発」の当面の「低廉」さの中毒症状に陥って将来を考えることをしない、「資本家」の本性をさらけ出しています。

マルクスは、『資本論』で「われ亡きあとに洪水はきたれ!これが、すべての資本家、すべての資本家国の標語なのである。」(大月版① P353)と述べています。「われ亡きあとに洪水はきたれ」という言葉は、「宮廷で宴会やお祭り騒ぎばかりをやっていればその結果はフランスの国債がふえるばかりだという忠告を受けたときに、ポンパドゥール侯夫人が言ったものだといわれている」(同前、注解P15(79))が、さすが「G7」だけあって、恐れ入ります。