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『前 衛』No904(2014年1月号)の「『古典教室』第2巻(第三課エンゲルス『空想から科学へ』)を語る」という不破さんと山口富男氏と石川先生との鼎 談のP108で、山口氏は、「第三章(上)資本主義社会の特徴。変革の必然性」のまとめとして、この講座から「利潤第一主義というとらえ方が、マルクスの
見方の核心をおさえたものであると、よくわかりました。」と、「剰余価値の生産が資本主義的生産の直接目的でもあれば規定的動機でもある」という資本主義のイロハを学んだことを述べ、講座には「資本主義社会の利潤第一主義が引き起こす衝突が、現在では恐慌だけでなく地球温暖化の問題ともなっていることが紹介されています」と、問題を「現代的にとらえる角度がきちんと座っている」ことをほめています。結びの結びとして、不破さんは前回の鼎談で石川氏に同意を得られなかった「地球温暖化」が「桎梏」であるというユニークな考えの視点を変え、論点をぼかし、石川氏に賛同を求めています。
まずはじめに、不破さんの「桎梏」についての珍論がどのように視点が変わり論点がぼかされたのか、見てみましょう。
不 破さんは、『前衛』No903では、「私は、『桎梏』という言葉で、今日、利潤第一主義が人間社会の存続をおびやかすところに来ている、そのすべての事態 をとらえたいと思っています。」(P111)と、「利潤第一主義」が「桎梏」の原因で、そのすべての現れが「桎梏」だと言っていたのが、翌月の『前衛』
No904では、「ほおっておいたら人類的破滅にゆかざるをえない危機という点──人類社会にとっての絶体絶命度からいったら、恐慌よりも温暖化の方がは るかに激しいわけです」(P108)と視点が変えられます。『前衛』No903で「資本主義的生産関係」が超歴史的な「利潤第一主義」に一般化され、こんどは「利潤第一主義」もなくなって「ほおっておいたら人類的破滅にゆかざるをえない危機」に変わってしまいました。
「桎梏」かどうかの論点は、「地球温暖化や原発」を「桎梏」と言っていたのが、「地球温暖化や原発」は「資本主義的生産関係の『桎梏』化の一つの深刻な表れ」だと言い、いってることが何が何だか分からなくなってしまいました。不破さんに代わって、簡単にいえば、「桎梏」が何なのかわかりませんということです。
不破哲三氏の誤りの原因は、すべての責任を「利潤第一主義」という超歴史的な概念に押しつけたことにある
「桎梏」とは何か、日本でどう現れているか、については、別のページ(「1-4」を参照して下さい。)で詳しく触れているので、そちらをご覧下さい。
『資 本論』第3巻 第2分冊(大月版 ⑤P1124~P1125)では、「資本主義的生産様式をはじめから際立たせる二つの特徴」として、すべての生産物が商品として社会的性格を持つという第 一の特徴と、資本による剰余価値の生産が、生産の直接的目的および規定的動機であるという第二の特徴とが述べられている。
そ もそも、不破さんの誤りの原点は、この「資本主義的生産様式をはじめから際立たせる二つの特徴」から、①第一の特徴である「生産の社会的性格」を捨象し て、②第二の特徴である「剰余価値の生産」を「資本主義的生産様式」から切り離し、③「剰余価値の生産」=「利潤第一主義」という超歴史的な概念を「資本
主義社会」の構成要素から抽出して、④「利潤第一主義」の追求を唯一の「資本主義社会の特徴」としたところにあります。その結果、資本主義社会の矛盾である「恐慌」と「利潤第一主義」と未熟な技術の結果生みだされた「地球温暖化や原発」などの被害との違いさえ、不破さんには認識できなくなってしまったのです。
「資本主義社会の特徴。変革の必然性」というテーマの座談会の内容は、マルクスの歪曲とエンゲルスとレーニンにたいする誹謗中傷、不破哲三氏の偉大さの誇示と、「利潤第一主義」の問題を中心にすえなければ資本主義の害悪を語ることはできないという不破氏の偉大な発見にもとづく「利潤第一主義」の改善という「普遍的価値の実現」、この平凡で超歴史的な結論こそが現在の日本共産党の理念と政策に完全に合致する「結論」であることを証明した。
「マルクスの見方の核心」が「利潤第一主義」にすり替えられ、マルクスとエンゲルスの〝科学〟が、「空想」に変革されたのです。