6A-1-8

お札の中の渋沢栄一は、今の日本に泣いていないか?!

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銀行を作って資本を生み出し、殖産興業に粉骨砕身した渋沢栄一が、いま生きていたら、日本経済と日本国民のことなど考えない今の経団連や資本家たちをしかり、今の日本に泣いていないか?!

〈石破首相が所信表明演説で述べた「賃上げと投資がけん引する成長型経済」への道の──渋沢栄一なら考えるであろう──すぐできる大事な第一歩について見てみたい〉

 

米国大統領選挙の争点

2024年11月5日投開票で行われた米国大統領選挙は、製造業を米国に呼び戻し、分厚い中間層を取り戻すという民主、共和両党の共通認識の実現方法をめぐって戦われ、外国企業への軟硬両用の手段を用いる民主党ハリス副大統領と強硬手段一辺倒のトランプ前大統領の戦いはトランプ氏の勝利に終わりました。

思い返せば、クリントン氏とトランプ氏が戦った8年前(2016年)の米国大統領選挙で、クリントン氏が「最低賃金を引き上げ、インフラや先端技術、再生エネルギーへの投資で一千万人の雇用を創出する」と「再生エネルギーへの投資」を除けばアベノミクス同様の絵に書いた餅の万年政策を述べるだけだったのに対し、トランプは、オハイオ州、ペンシルベニア州等具体的な地域をあげて産業空洞化の深刻さを指摘し、企業が海外に流出し雇用が海外に盗まれていることを述べ、「連邦法人税率を35%から15%に下げ、海外に流出した企業や雇用を取り戻す」ことを訴え、TPPについても「雇用が盗まれるような貿易協定は再交渉が必要」との主張をして勝利しました。そして、4年前(2000年)の「COVID-19」の大蔓延のなかで戦われた米国大統領選挙では、トランプ氏の、中国が「雇用と富を奪った」と歪曲して中国を攻撃することによってグローバル資本を免罪し、「連邦法人税率を35%から15%に下げ」ることによって海外に流出した企業や雇用を呼び戻すという虚構が機能せす、クリントン路線を修正したバイデン氏が勝利を収めました。(*)

このように、米国では、8年前から「海外に流出した企業や雇用を取り戻すこと」が経済政策の中心課題となっています。

(*)2016年と2000年の米国大統領選挙についての詳しい説明は、ホームページ6-3-1 「第1回大統領候補テレビ討論中継でCNNが伝えたことと、日本のマスコミが報道したこと」及びホームページ6-3-6「第二回テレビ討論を終えて…2020年米国大統領選挙と米国のこれからの四年間。」等、関連ページを参照して下さい。

 

放送事故まがいの出来事

問題の本質を語らず、焦点をずらし続けることを旨とする日本のマスコミですが、2024年3月28日放送のBSテレ東「NIKKEI NEWSプラス9」は、進行役の男性が、驚き目を白黒させるという、意外な話しの展開となりました。

 番組に出演した佐々木融氏と長濱利廣氏の二人が、日本の国内直接投資額がGDP比で北朝鮮以下であること、そして、円の強さについて、新興国通貨の中で最弱であるトルコリラよりもたった一つだけ上であるという円の弱さなどを語り、続けて、現在の日本の購買力平価とドル円等の為替相場との間の大きなギャップに関し、長濱氏が、本来なら為替相場と購買力平価とのギャップから日本の経済活動が優位に働くことでギャップが埋められていくはずであるが日本は企業の投資姿勢(国内直接投資に前向きでないこと──青山)などからなかなか難しいとの趣旨のことを述べると、それを受けた佐々木氏が、日本における購買力平価と為替相場とのギャップの縮小のしかたについて、インフレによって購買力平価が為替相場にさや寄せする(物価が上がることによって円の価値が下がり、円が為替相場に見合うようになること──青山)という国民にとって悪夢のような未来の蓋然性を淡々と語ったのです。これには、コメンテーターの男性もコメントのしようがなく、目を白黒させてうろたえる以外に対処のしかたがありませんでした。

そして、先日、トランプ2.0の誕生を受け、或るテレビ局で、第一生命経済研究所の熊野英生氏は──米国とグローバルサウスへの直接投資が増えることにより、企業の利益は増える一方、日本経済はより弱くなっていく──旨の見通しを述べていました。

佐々木氏と長濱氏、そして熊野氏は、〈自らの拡大のみを追い求める資本によって、国民が創った富と雇用が海外に持ち出され、「産業の空洞化」が進行し、資本の拡大によって発展する仕組みの資本主義国・日本は危機に陥っている。このままでは、国民にとって大変なことになる〉と言っているのです。

 「資本」を神様のように仰ぎ、資本家の走狗のようなマスコミ界において、このように、かれらが、率直に〝国内投資の低さと国内経済の弱さ〟を語ることは、放送事故まがいの、番組司会者がうろたえて目を白黒させるような出来事なのです。

 

資本主義的生産様式の社会で国民が生きのびる道

資本主義的生産様式の社会は、──資本家とその代理人が支配する企業が労働者を雇い、労働者が労働によって生み出した富を企業が搾取して「資本」を増やし、その増えた「資本」を投資して経済を拡大させる──という仕組みの社会です。だから、労働者が創った富と雇用が海外に持ち出されて、この仕組みが壊れてしまったら、その国の「経済の発展」はなく、資本主義的生産様式の社会に生きている以上、国も国民も衰退する以外に道はありません。

資本主義的生産様式の社会で国民が生きのびるためには、「資本」を国内に投下し続けて、「産業の空洞化」を起こさないことが、なにより大切なことなのです。だから、「産業の空洞化」による中間層の喪失に気付いた米国は、帝国主義的なやり方で、必死に、「産業の空洞化」を修復しようとしているのです。そして、日本も、前の「節」で見たように、資本主義社会でメシを食っているエコノミストたちさえもが、そのことを言わざるを得ないところまで、日本の経済と社会の危機は進行しているのです。

しかし、米国のような帝国主義的なやり方など取れず、米国の子分としての現状を良しとしいる日本の資本家企業その企業の言いなりの労働組合とかれらと持ちつ持たれつの関係を築いている日本の諸政党は、「成長戦略」とか「生産性革命」とか「人づくり」とか中身のない言葉だけの「施策」を並び立てて国民を煙に巻くだけで、いまだに、日本を発展させる上で欠かすことのできない「産業の空洞化」を修復するといういう明確な目標を掲げることができません。

 

獲得議席5位までの諸党の先の衆院選での経済政策

2024年10月27日投開票で行われた日本の衆議院総選挙での獲得議席順に五つの党の経済政策を、極々、大雑把に並べると、次のようなものです。

「成長戦略、生産性革命、人づくり革命など、政策を総動員し」と言って、これまでどおり、大企業中心にお手盛り支援策の継続(自民党:議席一位)。

「人から始まる経済再生」として、重要であるが「人への投資」と「物価を上回る年収アップ」という分配要求と「地域のニーズに応じた新たな産業、10年後の日本の『飯のタネ』」の創出により「国内市場を大きく成長させる」という新産業の夢想という自民党の「成長戦略」と同次元の現実逃避の政策(立憲民主党:議席二位)

「日本が抱える本質的な問題を解決することができれば、この国は再生する。議会改革、行政改革により財源を生み出し、その財源を今一番必要とされるところに投じる。」として、「減税と既得権を打破する成長戦略・規制改革で、日本経済を再起動」と「日本が抱える本質的な問題」を「既得権」と捉えて、安倍元首相と同じ政策を述べ続ける(日本維新の会:議席第三位)。

「手取りを増やす。」として「103万円の壁」の突破などの分配機能の改善と「成長分野への投資減税」という、これまた、自民党の「成長戦略」と同次元の「成長分野」(半導体と観光?)頼みの政策(国民民主党:議席第四位)。

「成長型経済の移行へ、持続的な賃上げ・所得向上を実現」として富の分配の適正化や「人財への集中投資」を述べ、「GXを通じた持続可能な経済成長の実現」の中で「国民生活や経済活動に欠かせない重要物資の国内製造力の強化」をうたう(公明党:議席第五位)。

ここには、「産業の空洞化」をどのように克服するかが経済政策における最大の争点であった2024年の米国の大統領選挙との違いがはっきりと現れています。いまだにヒラリー・クリントンが敗北した「政策」の道をひた走りに走り続けています。

 そして、「成長戦略」、「新たな産業、10年後の日本の『飯のタネ』」、「成長分野への投資」、「成長型経済の移行」や「人への投資」を言っていますが、これらの「政策」には、資本主義的生産様式の社会における「成長」(経済)の原動力である企業の「投資」を喚起するための、この生産様式が必然的に生み出す不合理に着目し、それを活用しての資本主義的解決策など、まったく眼中にありません。

 

当面の、最善の、現在の日本を少しでもよくするための弥縫策はあるのか?

経済を、不当な搾取もなく、豊かに健全に発展させる道は、「資本」を大きくすることによって経済を発展させるという生産の仕組みを廃絶して、「資本」を大きくする必要のない、「資本」の無い、「資本の支配」の無い、人民が社会と企業を支配する生産の仕組みの社会をつくる以外にありません。

 私たちは、このことを強く訴え続けたうえで、「資本」の無い社会への道につながるものとして、今の、産業が空洞化した、危機的な状況にある日本経済を立て直すためには、「産業の空洞化」を強制的に是正するために「資本の支配」をコントロールすることが必要であり、そのことこそが真の解決の道であることを声を大にして訴えなければなりません。

 しかし、これらが叶えられない今、この資本主義的生産様式の社会での、この道に通じるような、当面の、現在の日本を少しでもよくするための、最善の、弥縫策は何か、以下で見ていきましょう。

 

いま、渋沢栄一が生きていたら

日本の資本主義を発展させるためにも必要な、海のものとも山のものともつかぬ「施策」ではない、日本の「産業の空洞化」を修復するすための、ほんのわずかな、第一歩となる、資本主義的生産様式のもつ矛盾を活用しての資本主義的解決策、資本主義の未来に希望を抱き、銀行を作って資本を生み出し、殖産興業に粉骨砕身した渋沢栄一が、いま、生きていたなら行なうであろう施策について、一緒に見てみましょう。

「資本」を大きくすることによって経済を発展させるという仕組みの資本主義的生産様式は、必然的に「資産」を運用する人たちと企業とに富を集中させ、少数の富める者と大量の貧しい人々を生み出します。そして、資本主義はこれらを推進する人たちと企業とに拝金主義を浸透させます。

 その結果、企業は労働者から搾取したお金の使い道がなくても労働者や社会に還元しようとはせず、金の亡者として、「内部留保」(2023年度は600兆9857億円(前年度比8.3%、設備投資も含まれるがその伸びは小さい))として莫大な富を貯め込み、日銀調査統計局(2024年9月19日発表)の資料によると、企業の金融資産は1559兆円で、現金・預金が350兆円(22.4%)、株式等が429兆円(31.5%)、計779兆円(53.9%)にも上っています。

 そして、富裕層は、野村総研の推計「2021年の日本における純金融資産保有額別の世帯数と資産規模」(2023/03/04)によると、純金融資産一億円以上の富裕層の世帯(全世帯の2.66%)が全純金融資産の22.3%に上る364兆円を保有しており、上記の日銀資料によれば、家計の金融資産は2212兆円で、現金・預金が1127兆円(51.0%)、投資信託・株式等が429兆円(19.48%)となっています。

勿論、企業の現金・預金の中には運転資金もあるでしょうし、家計の預金のなかには金融機関を通じて企業の成長投資に充てられるお金もあるでしょう。しかし、投資信託や株式等のお金の大部分は企業への新たな投資ではありません。政府もマスコミもNISA(*)を「投資」と偽っていますが、NISAは株式市場という鉄火場にお金を投入するだけで、本当の意味での〝投資〟ではありません。

このように、資本主義は「資本」を大きくして経済を発展させる仕組みの社会ですが、「資本」を大きくするために労働者から搾り取ったお金が、上記のように企業や富裕層の懐に滞留されて「資本」を大きくするために使われないで放置されています。これは、資本主義が持つ制度的な矛盾です。〝投資〟に使われず、富が「資本」として活動できず、「資本」として「死」んだ状態で放置されているのです。これを資本の「死蔵」と言います。

資本主義の未来に希望を抱き、資本主義を発展させるために、銀行を作り貨幣「資本」を生み出し、殖産興業に粉骨砕身した渋沢栄一が、いま、生きていたなら、経団連等の資本家団体を叱り、政府にこれらの「死蔵」されているお金の放出策を練らせたことでしょう。これこそが、企業や一部の人たちの利益のために資本主義社会を礼賛するのではなく、資本主義社会を純粋に最善の生産様式の社会だと信じている人たちの振るまいのはずです。

(*)「NISA」についての詳しい説明は、ホームページ6A-1-6国民の資産形成をNISAに賭ける日本資本主義の末路と日本の未来への展望…マルクスの目で見る〝投資とNISA〟と〝日本資本主義の明日〟」を、是非、参照して下さい。

 

資本主義的生産様式は資本や資本家とも対立している

資本主義的生産様式は労働者階級と対立しているだけでなく、「資本」や資本家とも対立しています。資本家が利潤を増やそうとして設備投資を行なえばおこなうほど利潤率は低下し、資本主義的生産を発展させる足かせとなり、資本家が利潤を増やそうとして搾取を強めれば強めるほど購買力が低下し、資本主義的生産を発展させる足かせとなり、企業と資本家が富を貯め込めば貯め込むほど「資本」の「死蔵」となり、資本主義的生産を発展させる足かせとなります。資本主義的生産様式は労働者階級との矛盾を抱えているだけでなく、資本主義的生産様式の基での企業と資本家とも矛盾を抱えているのです。

その理由は単純明快です。資本主義的生産様式の社会は、生産が社会化されているにもかかわらず、私的「資本」が大きくなることによって経済が発展する仕組みになっているために〝社会化された生産〟と〝労働者階級の搾取〟という矛盾と〝社会化された生産〟と〝企業と資本家への富の集中〟という矛盾とが並存しているからです。

私たちは、このことをしっかりと認識し、この矛盾は資本主義的生産様式を〝社会化された生産〟に見合った新しい生産の仕方に変えない限り解消されないことを労働者・国民に明らかにしなければなりません。同時に、これから述べる〈「賃上げと投資がけん引する成長型経済」への道〉は、そのような新しい生産の仕方の社会への変革の第一歩であると同時に資本主義を最善の生産様式と信じている、連合の幹部連中のような輩ではない、現在の日本で圧倒的な多数を占める善良な人たちとともに資本主義を改善するための共同闘争を切り拓く太く大きな道の入り口なのです。

 

「賃上げと投資がけん引する成長型経済」への道の意義

当面の、最善の、現在の日本を少しでもよくするための弥縫策ではあるが、上記のような意義をもつ施策について、一緒に見ていきましょう。

他国の企業を犠牲にして自国の繁栄を築く米国のやり方は、全ての国が米国にひれ伏すのか、自国オンリーの極右思想の支配する国になるのかの2つに1つの選択肢を選ぶ道でしかありません。

私たちが、資本主義的生産様式のままで、他国と折り合いをつけて、何とか資本主義社会を延命させるためには、石破首相が所信表明演説で言葉だけで示した「賃上げと投資がけん引する成長型経済」への転換のための内実のある道を進む以外にありません。

 前掲のように、エコノミストたちも言わざるを得なくなり、財界と金持ちにべったりの自民党の総理大臣さえもが、所信表明演説の〝経済全体の活力〟の「項」で、「30年前、日本のGDP(国内総生産)は世界全体の18%を占めていましたが、直近の2023年では4%です。そして1位だった国際競争力は、今、38位に落ちました。配当は増え、海外投資も増えた一方で、国内投資と賃金は伸び悩んできました。」と告白し、「付加価値の高いサプライチェーン(供給網)を国内に回帰・立地させていくこと」を通じて「賃上げと投資がけん引する成長型経済」を実現するという願望を言わざるを得ないほど、日本の「産業の空洞化」は深刻で危機的なところまできています。

しかし、「投資」のための原資がなければ、「成長型経済」も「賃上げ」も実現させることはできません。そして、経団連等の資本家団体も政府もそのことは重々承知で、企業や富裕層に使われずに「死蔵」されているお金が沢山あることも重々承知のはずです。

 資本主義への希望にもえ、日本資本主義の黎明期に生きて、資本主義を発展させるために銀行を作り貨幣「資本」を生み出すことに粉骨砕身した渋沢栄一、いま彼が生きていたら、企業や富裕層によって「死蔵」された莫大な富の存在に目を付け、必ずや、これらの莫大な「死蔵」され富の活用について提言し、実行したことでしょう。だが、企業や富裕層のために粉骨砕身している自・公や基本的に企業や資本家の側にいる人たちを含んだ維新や国民や立民には、先にみた「衆院選での経済政策」を見ても分かるとおり、そのような観点などまったくありません。発展期の資本主義のための粉骨砕身と資本主義の腐朽期における粉骨砕身とにはこのような差があります。

資本主義は「資本」を大きくして経済を発展させる仕組みの社会であり、その仕組みによって資本主義を支配し推進する企業や富裕層に富が集中します。経済を発展させるためには、これらの富は「資本」に転化されなければなりません。しかし、現在の日本は、その集中した富が「資本」として使われることなく「死蔵」され、本来、資本主義的生産様式の基で生かされるべき「死蔵」された富が積み重なって経済発展の「死重」となり、経済の発展にブレーキをかけ、国民生活を押しつぶしています。財界も金持ちも連合も、豊かな資本主義国日本への道を妨げる妨害者です。

 「賃上げと投資がけん引する成長型経済」への道は、これらのことを、資本主義を最善の生産様式と信じている善良な人たちも、ウラー(賃金を上げろ、大企業は横暴をやめろ、等々)と叫ぶだけの人たちも、しっかり理解することから始まります。そして、その理解が深まれば深まるほど、〝経済は社会のため、国民のためにある〟という社会についての共通認識が「資本主義を最善の生産様式と信じている善良な人たち」と「ウラーと叫ぶだけの人たち」との間で深まります。

 

今、求められていること

〝企業や富裕層に使われずに「死蔵」されているお金を「投資」に使って、日本経済を復活させるために活用せよ!!〟とは、自民・公明・維新・国民民主や連合には、地団駄を踏むだけで、けっして言えないことです。

しかし、自民党の総理大臣さえもが、所信表明演説で、「配当は増え、海外投資も増えた一方で、国内投資と賃金は伸び悩んできました」と、口が裂けても言ってはならないようなこと(*)を言わざるを得ないほど、日本の「産業の空洞化」は深刻で危機的なところまできています。私たちは、富と雇用を海外に持ち出した企業の社会的責任を追求し、社会のために企業がある社会──社会主義的生産様式の社会──の必要性とその実現への道を、今こそ力強く、訴えるべき時です。そして、今の日本は、資本主義の信奉者の仮面をかぶった利己主義の塊のような企業や資産家の人たちが富を「死蔵」して資本主義国日本の経済発展にブレーキをかけている事実を暴露し、資本主義の発展を願うかのように振る舞う彼らに肩身の狭い思いをさせ、世論の力で企業や資産家たちの「死蔵」した富を解放するまたとない機会に遭遇しています。

103万円の壁などいう小さな「壁」に惑わされてはなりません。日本の「産業の空洞化」は、資本主義国日本の経済発展のブレーキとなるだけでなく、社会のために企業があるという新しい生産様式の社会を実現する上でも大きな障害となります。日本の「産業の空洞化」の克服こそが今の日本にとって解決すべき焦眉の課題です。

だから、今こそ、労働者階級に支持基盤をもつ政党の出番なのです。

 支持層の階級構成からみて、なんとか、これらの事情が分かれば、「死蔵」され資本主義の「死重」となっている莫大な富の活用の旗を掲げて「欲の深い企業や富裕層」とその擁護者を追いつめてくれそうな、国会に議席を持つ政党は、社民党、「共産党」、そしてれいわ新撰組(※)があります。

 これらの政党が、「産業の空洞化」の克服という今の日本にとっての焦眉の課題に早く気づき、党派のためでなく国民全体の立場に立って、「新社会党」や圧倒的多数の無党派の人たち、そして「資本主義を最善の生産様式と信じている善良な人たち」をも巻き込んで、広範な人民連合の形成に向かうならば、石破首相も言わざるを得なくなった「賃上げと投資がけん引する成長型経済」への道は、新しい生産様式の社会へ繋がる壮大な世直しへの端緒となるでしょう。青山は、このことを期待して止まない。

(*)なぜなら、自民党は財界による富と雇用の海外輸出を積極的に支援してきた張本人だからです。詳しくは、ホームページ1-4「70年代の始め以降に財界がすすめた政策…産業の空洞化への歩み」等を参照して下さい。

(※)なお、れいわ新撰組は、「増税?ダメ・絶対!」の政策で「資産課税の導入」を謳い、「本物の安全保障」の政策として「メイド・イン・ジャパンを買いまくれ!産業の国内回帰を!」という「節」を設け、「30年近いデフレ不況で、日本の成長を支えてきた製造業の空洞化が進みました。日本の誇る『ものづくり』の技術や知見を継承していくためにも、国が財政出動で『メイド・イン・ジャパン』を支え、製造業の国内回帰を目指します。」とし、「デフレ不況」と「製造業の空洞化」(富の海外流出による投資の減と雇用の海外流出)の関係は本末転倒ですが、「製造業の国内回帰を国が支える」ことを明記しています。

 

消費税について

消費税も、また、資本主義的生産様式における矛盾の産物です。資本家階級は、企業の利益を増やすために企業への税負担を軽減させ、その代わりに消費税を拡大させます。しかし、消費税が増えれば消費は縮小して売り上げが減り利益が減少します。私的資本による労働者階級の搾取を通じて経済を発展させるという社会的生産のシステムである資本主義的生産様式は、私的企業の利益と労働者の利益がぶつかり合う二律背反の生産様式なのです。

本来、税は、新たな富を得た負担能力のある者が払うべきものです。そうしてこそ、経済を正常に機能させることができます。私的資本が利益を増やすことによって経済を発展させる資本主義にとって、消費を減少させる消費税は、企業の売り上げを減少させ、利益を減少させる最悪の課税方法です。モノやサービスに税を課すのであれば、最も合理的なのは、担税能力のある人たちが買う奢侈品等に掛けるべきなのです。

にもかかわらず企業や資産家が消費税を増やしたがるのは、資本主義の「健全」(合法則的)な発展よりも労働者の生活水準を低位にしてでも企業や資産家の負担を減らしたいという強欲に基づいています。

私たちは、税の本来のあり方とともに、資本主義的生産様式における消費の決定的な重要性と資本主義の「健全」な発展を顧みない企業や資産家の私利私欲に満ちた強欲性を明らかにし、糾弾しなければなりません。

資本主義的生産様式の矛盾と不合理性を明らかにし、資本主義の「健全」(合法則的)な発展よりも自らの私利私欲を上に置く企業や資産家の強欲性を暴露して、資本主義を最善の生産様式と信じている善良な人たちを私たちの隊列に参加させよう!!